1989年。冷戦の象徴ともされた、東西ドイツを分断し続けたベルリンの壁は崩壊、翌年、ドイツは統一された。国のあり方が大きく変わっていくなか、東ドイツの市民たちは、どんなふうにこの激動に向き合っていたのか。
 当時、東ドイツの日系企業につとめ、現在もジャーナリストとしてベルリンに暮らす日本人の著者が見た、当時の東ドイツのリアル。旧東ドイツ時代に親しんだ、「おいしくない」食品などを買い求め、失われた“祖国”を感じる東ドイツ市民たちの姿など、当時、東西ドイツを自由に行き来することが許された、リーガル・エイリアンとしての著者の立ち位置ゆえの視点にも新鮮な発見が多い。タイトルにもある、「小さな革命」とは何なのか。なぜ「小さな」というのか。
 ドイツ統一から25年。ドイツが東西に分かれた国だったことをリアルで知らない世代も、すでに多く育つ。ドイツに多くのシリア難民が流入し、あらためて国と国とのあり方を考える機会も生まれた。2015年の秋だからこその一冊である。

週刊朝日 2015年12月4日号