新潟国際アニメーション映画祭が3月15日から20日まで開催された。この映画祭には、人材育成や地方創生の目的もあるという。現地からレポートする。AERA 2024年4月22日号より。
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新潟国際アニメーション映画祭の目的は大きく三つある。一つは、世界各国の40分以上の長編商業作品を興行価値だけではない見方で照査することで、新たな批評の場を生み出し、知られざる名作にも光を当てることだ。
映画を上映する取り組みとしては、出品作を審査員が審査し、各賞を決定する「長編コンペティション部門」、映画祭のキュレーターが選んだ近年の観るべき名作を上映する「世界の潮流部門」、技術スタッフや制作会社を顕彰する「大川博賞・蕗谷(ふきや)虹児賞」などに大きく分かれている。
世界の商業作品に注目
2回目となる今回は、3月15日から20日まで開催。審査員長にアイルランドのアニメーション作家、ノラ・トゥーミーさんを据えた。国内の知名度は高くないが、自身の監督作品がアカデミー賞長編アニメーション賞に複数作ノミネートされるなど、世界的な評価は高い。
コンペには29の国と地域から49本の応募があり、12作品がノミネートされた。日本からは、塚原重義監督の「クラユカバ」と岡田麿里監督の「アリスとテレスのまぼろし工場」の2作品が入った。グランプリ作品には、カナダのジョエル・ヴォードロイユ監督の「アダムが変わるとき」が輝いた。
映画祭の実行委員長を務めた映画プロデューサーの堀越謙三さんは、「アニメ表現の多様性を国内外に示せたのではないか。『ああいうテーマでもいいんですね』と驚きの声もあった」と手応えを話す。
表現の多様性の面で言うと、アニメは危機に瀕しているとも言える。例えば宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」の受賞が話題となったゴールデングローブ賞は、今年のノミネート作品を見ても日本とアメリカの2カ国しかない。一方で商業アニメは、ヨーロッパや南米やアフリカなど、実は世界中で作られている。