ヤクルトの応援でおなじみ、傘を振りながら歌う「東京音頭」。この節にあわせて「くたばれ読売」と叫ぶ一部のファンがいた

 かつて巨人でプレーしたOBはこう語る。

「くたばれと言われて、いい気持ちにはならないですよね。巨人ファンに肩身の狭い思いをさせてしまっているという感情にもなりました。ただ、現役時代に阪神と対戦する時、完全アウェーの甲子園で勝つことが快感でもありました。ヤジを飛ばしているのは一部のファンで、巨人の選手に優しいファンも多くいます。『今日は打たんといてくれなあ』、『阪神に移籍してくれへんか』と声をかけられたりしたこともありました」

 このOBは「くたばれ読売」より気になるコールがあるという。

「『あと1人、あと1球』コールですね。あれ、阪神戦でよく流れるんですけど、阪神の投手は嫌なんじゃないかな。9回のアウトは特別な重みがある。打者を抑えることに集中したい状況であのコールが流れると落ち着かない。実際に『あと1球』コールの後に痛打を浴びて、同点や逆転に追いつかれると球場がため息に包まれる。対戦相手に敬意がないだけでなく、投手に対しても不要な重圧をかけるので好きではないです」

 パ・リーグのある選手は、牽制球の際に投手へ浴びせるブーイングへ疑問を投げかける。

「あのブーイングって何の意味があるんですかね。試合時間を延ばしていることに対するクレームの意味合いがあるのかもしれないけど、攻撃面からすれば相手投手が牽制を投げてくれるのはありがたいんですよ。牽制の間合いをつかめるし、牽制の回数が多いほど、走者が重圧をかけていることを意味しているので。走者とバッテリーの駆け引きは野球の醍醐味です。数年前からブーイングが聞こえるようになりましたが、走者にとってもプラスになっていないので控えてほしいですね」

 在京球団の首脳陣は、FAで移籍した選手のヒーローインタビューで一部のファンが浴びせるブーイングについて「やめてほしい」と苦言を呈する。

「FAで主力選手が他球団に移籍すると、スタメン発表や打席に入る際に大きなブーイングが浴びせられます。止めるのは難しいかもしれないけど、試合後のヒーローインタビューでその選手が話している声を遮るようなブーイングはリスペクトがなさすぎます。一部のファンの行動で他の観客が嫌な気持ちになるし、選手も恥ずかしくなる。応援はありがたいですが、相手球団の選手に対しての迷惑行為は控えてほしいです」

 コロナ禍を経て声出し応援が解禁されてから、失策した選手や好機で凡打に倒れた選手に、「帰れ!」「野球辞めちまえ!」など選手を傷つけるようなヤジが飛ぶケースが見られるようになった。ファンの応援が選手たちの力の源になっていることは間違いないが、誹謗中傷めいたヤジやコールは許されない。将来のプロ野球選手を夢見る子供たちを失望させないためにも、スタンドで観戦する際は節度を守った応援が求められる。

(今川秀悟)