開成/高校の学年フロアの吹き抜けは階段状のテラスに。学校行事の準備など自主活動の場になっている(撮影/写真映像部・上田泰世)

 中高一貫校で注目の2校が校舎や施設をリニューアルした。伝統を継承しつつ、生徒たちにどのように活用してほしいのか、先生たちの思いを聞いた。AERA 2024年4月15日号より。

【写真】開成/新校舎全体が正門から見渡せる開放的なデザイン

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 開成中学校・高等学校(東京都荒川区)は、2021年に創立150周年を迎えるにあたり、12年から「開成の未来を創る」という志を掲げ、大規模な建て替え事業に着手した。工事は段階的に進み、23年夏に第2期工事を終え新校舎が完成。24年秋には、すべての工事が完了する。

 新しくなったのは、名物の運動会が催されるグラウンドをはじめ、高校普通教室の校舎、中高生が共通で利用する特別教室や体育館、食堂など、中学校舎の一部をのぞくほぼすべての施設。道灌山通りに面した正門も見た目を一新した。なかでも大体育館は、「冷暖房完備で広いため、部活動が思い切りできる」「試合に来た他校生にも驚かれる」と生徒からも大人気だ。

開成/新校舎全体が正門から見渡せる開放的なデザイン(撮影/写真映像部・上田泰世)

 建築委員会委員長の有山智雄教諭は、本事業の重要事項として「授業・生徒活動・運動会」の三つを挙げる。

「多様化する授業形態に対応できる特別教室や機材の充実。生徒が伸び伸びと過ごせるゆとりある空間と、中高の生徒が自由に行き来できる回遊性の確保。そして、工事期間中も校内で運動会を開催するための工事調整に尽力しました」

 さまざまな要望をくみ、設計の素案を作ったのが、美術科の大友義博教諭だ。中高の生徒が集まることができる食堂(学生ホール)を校舎全体の中央に配置するなど、生徒同士の交流や自主活動が発展する全体図を描き出した。

「質実剛健でありつつ、外観にもこだわりました。毎朝門をくぐる度に、本校の生徒であることを自負し、充実した学校生活を送る原動力としてほしいですね」(大友教諭)

新たに理科講義室

 JR水道橋駅前の丘に立つ桜蔭中学校・高等学校(東京都文京区)。創立100周年を迎える同校では2023年10月、2年半の工事を経て、新たな東館が完成した。

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