講談社青い鳥文庫の『JC紫式部』は人気漫画家・阿倍野ちゃこのイラストを表紙に起用。冒頭には描き下ろし漫画も収録(写真:講談社提供)

 大きな瞳の美少女、清潔感あふれるイケメン──。子どもの頃、夢中になって読み耽った児童書の表紙が今、変貌を遂げている。いつの間にこうなったのか。AERA 2024年4月8日号より。

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 久しぶりに、小学生の子どもと書店の児童文庫の棚を訪れて驚いた。懐かしの『若草物語』の表紙には、大きな瞳がキラキラ輝く四姉妹が並んでいる。『南総里見八犬伝』にもイケメンが勢揃い。幼い頃に読んでいた名作児童書の表紙を飾るのは、もっと“純朴そう”な人物だったはず。いつの間にこんなに可愛らしくなったのか。

 同様の感想を抱く大人は少なくないらしい。自身も子どもの頃、児童書を愛読していたという30代父親は、娘が読んでいる本の表紙全部が“アニメっぽい”ことに驚いた。「僕らが昔手にした児童文庫とはずいぶん雰囲気が違いますね」と苦笑する。小4になる娘は、児童文庫の中でも10年以内に書き下ろされた『氷の上のプリンセス』(風野潮/講談社青い鳥文庫)や『四つ子ぐらし』(ひのひまり/角川つばさ文庫)などシリーズ作品が好みだという。

「最初はポップな表紙に正直、戸惑いました。でも、一方で娘は『星の王子さま』や『鏡の国のアリス』などの名作も読む。表紙に惹かれて選んでも、結果読書を楽しんでくれたらそれでいいと思うようになりました」

転換期は00年ごろ

 小学5年生の男子を持つ40代の母親は、むしろ児童書のアニメ絵化に好意的だ。「私自身、漫画やアニメも、いわゆる“萌え絵”も好き。今の児童文庫はむしろワクワクします」と言う。読書が趣味という息子も「こういうタッチの絵を見慣れているし、これが当たり前。違和感はないし、かっこいいからいいんじゃないかな」と、自然に受け入れている。「児童文庫の表紙に、現在のような“漫画的な絵”が起用されるようになったのは2000年代に入ってからですね」と言うのは、1947年創業以来、子ども向けの本を刊行し続けているポプラ社児童文庫編集部の門田奈穂子氏だ。

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