『アメトーーク!』の2回にわたって「賞レース2本目やっちまった芸人」に出演した笑い飯
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 3月14・21日放送の『アメトーーク!』(テレビ朝日)で、2回にわたって「賞レース2本目やっちまった芸人」という企画が放送された。

「M-1グランプリ」「キングオブコント」などの賞レースの決勝で、1本目に披露したネタで高評価を受けて、そのまま優勝するのではないかと期待されながらも、2本目のネタで思うように笑いを取ることができず、優勝を逃してしまった芸人が集まっていた。

 2本目に失速してしまった芸人はこれまでにたくさんいる。芸人が人生をかけて挑む賞レースで負った傷をえぐる残酷な企画ではあるが、視聴者としては実に興味深いテーマだ。出演した芸人たちも、過去の失敗を振り返りながら、反省の言葉を述べたり、敗因を分析したりしていた。

キーワードは「幅」

 彼らの口からよく出ていたキーワードが「幅」である。賞レースに挑む芸人は、1本目とは毛色の違うネタを2本目にやることで芸の幅を見せたいという気持ちになることがある。しかし、実際にそれをやると、1本目と同じようなネタを求めていた観客の気持ちとのズレが生じて、期待していた笑いを取れなくなってしまったりする。

 また、自分たちの信念を貫いて失敗することもあれば、他人のアドバイスや意見を聞いて、それが裏目に出ることもある。もちろん誰の意見を聞くにせよ、最終的には本人たちが判断することになるのだが、そこまでにはさまざまな葛藤がある。

 そもそもネタというものは、その場その場の状況次第でウケ具合が大きく変わる。彼らは賞レースの決勝という場所で、その日その瞬間にたまたま波長が合わなかっただけなのだ。

 彼ら自身は、それまでにもそのネタを人前で披露してきているし、そこで笑いも取っている。だからこそ、その選択が間違いだとは思えないのである。

 一視聴者の立場からすると、2本目に奇をてらったような変則的なネタをやったりする芸人を見て、「なんでそんなネタをやるんだろう」「ウケるわけがないじゃないか」「勝負を捨てているのかな」などと思ったりする。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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勝負を捨てている芸人はいない