竹増貞信/2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
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「コンビニ百里の道をゆく」は、54歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

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 今回は「ディベート」について考えてみます。会社員として働く中で、社内外の人と意見を戦わせる機会は当然、出てくるでしょう。では、ディベートの本質的な意味とは、どんなことでしょうか。

 私も若い頃はその意味も理解せず、自分が「正しい」と考えることをただただストレートに自己主張していた気がします。ある人が言ってくれました。「竹増君。正しいことは、ストレートに言っちゃいけないよ。相手のことを思いやった上で、自分が正しいと思うことを『総意』に持っていくことが大事だよ」と。

 その姿勢は、「多様性をリスペクトするからこそ、新たな価値が生まれ、イノベーションが起こってくる」という考え方にも通じます。要はディベートとは勝ち負けの「決着」をつけるためのものというよりは、「意見を出し合う」ためのものだということです。意見をぶつけ合わせるときには、相手へのリスペクトを忘れず、その中から新しい価値、自分が考えている「正しいもの」以上のものを生み出せるように努力すること。それが社会の一員としてのディベートだと思います。

ディベートで意見を交換する高校生たち

 もちろん、自分の論理をしっかりと組み立てられる人はディベートに「強い」とは言えますし、その訓練をすることは大事なこと。ただ社会で働く上では相手を論破するというよりは、「創造的ディベート」を意識することが大切。その意識のあるリーダーがいるチームは皆が働きやすい。

 創造的ディベートのために必要なもの。それは「素直さ」だと思います。自分自身にバリアをはり、「私が正しいんだから他の声は受けつけないぞ」ではなく、何でも相談できたり、部下が話しやすかったり。そのような意識を持ったリーダーがたくさんいる職場からは、新しいものが生まれ、さらなる発展が大いに期待できるのではないかと考えています。

◎竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長

AERA 2024年4月1日号