ラリー遠田
テレビ番組の中では、出演するタレントは与えられた役割をきちんとこなすことが求められる。そこが職人としての評価の対象になる。
でも、タレントはテレビ制作者に一方的に操られるだけの単なる駒ではない。自分が面白いと思うものや見せたいものを表現することが仕事であるという面もある。テレビではその部分を控えめにしておいて、ライブなど別の形でそういう発信を積極的に行っている人もいる。
フワちゃんは、ああ見えてどちらかというとアーティスト志向の強いタレントである。もともとYouTuberとして人気になったのも、自分自身で出演・企画・編集をしている動画がエキセントリックで面白かったからだ。フワちゃんの底抜けに明るいキャラクターや独特のビジュアルセンスが話題になっていた。
自分の見せ方にこだわりも
そんな彼女は、今でもセルフプロデュース能力が高く、自分の見せ方に対するこだわりが人一倍強い。視聴者や共演者は「フワちゃん」という人間をどういうふうに見ているのか。それを踏まえて、どういうふうに行動すれば彼らを楽しませて、彼らと良い関係を築くことができるのか。彼女はそのことを冷静に考えて、戦略を練って、それを実践してきた。
そんな彼女は常に自分軸で行動している。とにかくテレビにずっと出続けたいと思っているような定住型の職人気質のテレビタレントとは違う。彼女は生き様を見せるタイプのアーティスト気質のタレントなのだ。
彼女が海外に行くのは逃避でもなければ、何かを学ぶためでもない。それはフワちゃんがフワちゃんとして生きるための必然だったのだ。（お笑い評論家・ラリー遠田）
ラリー遠田
ラリー遠田（らりー・とおだ）／作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』（白泉社）の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』（ディスカヴァー携書）、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり＜ポスト平成＞のテレビバラエティ論』 （イースト新書）など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』（光文社新書）。http://owa-writer.com/
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