収穫したブロッコリーを整理している様子。11~3月頃にとれるものは甘さが、6月頃にとれるものはパリッとした食感がより楽しめるという(写真:安井ファーム提供)

 ブロッコリーが指定野菜に「昇格」する。祝意を込めて、ブロッコリー好きの記者が「オッケーブロッコリー」が決め台詞のあの人に話を聞いてみた。AERA2024年3月18日号より。

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「作っている野菜が国から『重要なもの』として認められたのは、ひじょうにうれしいです」

 こう話すのは石川県白山市の農業法人「有限会社安井ファーム」の広報担当、土田龍之介さん(35)。主力野菜のブロッコリーが、「とくに消費量の多い野菜」としてキャベツ、白菜など14品目と並び「指定野菜」に指定されたのだ。農林水産省が2026年度から適用する。

 安井ファームでは年間200万株のブロッコリーを出荷する。栽培面積は約90ヘクタール。石川県全体のブロッコリー栽培面積の約3分の1を占める。

オッケーブロッコリー

「ブロッコリーは日差しで変色するカリフラワーや重くて収穫作業の負担が大きいキャベツなどに比べると、野菜の中では比較的手のかからない方。それでも、20キロの肥料を担いでの追肥や、苗の植え付けなど腰をかがめる作業は重労働。収穫時の喜びはひとしおです」

 そんな中での指定野菜「昇格」。値段が安定するよう、国からの補助金も手厚くなる。祝!指定野菜ですね。そう水を向けると、こう返ってきた。

「ただ、今後決まる『指定産地』にならないと、補助金は入らないんです。むしろ指定によって新規参入が増え、供給過多に陥りやすいかも。一生産者としてはこれまで以上に、消費者にブロッコリーの魅力を発信していく必要があると思っています」

 力を入れているのが、SNSの活用だ。とくに土田さんが「中の人」として担当するXは、フォロワー7.7万人の人気だ。

「ブロッコリーの魅力は、その『癖のなさ』による汎用性の高さ。ブロッコリーにマヨネーズをつけて食べると、ほぼほぼマヨネーズの味ですよね。和食、洋食、中華、スイーツ、離乳食、すべてに『寄せられる』。そこがいちばんの魅力です」

 Xでは、その保存法(ポリ袋に入れて冷蔵庫のチルド室へ)、買い物時の選び方(房全体がギュッと締まったものを)など、さまざまな面からブロッコリーに関する蘊蓄(うんちく)を紹介する。

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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