SOPHIA、フルオーケストラと初共演したSPライブで結成30周年イヤー幕開け
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 今年結成 30周年を迎えるロックバンド・SOPHIA が、3月10日【SOPHIA Premium Symphonic Night in 大阪城ホール】と題した一夜限りの特別公演を開催し、当日のライブレポートが到着した。

 本公演は昨年行われたFM大阪主催イベント【LIVE SDD 2023】で、彼らがシンフォニック・オーケストラと「夢」という楽曲で共演したことがきっかけとなり、実現したもの。SOPHIAにとって、フルオーケストラとの本格的なコラボレーション公演は今回が初。当日は、バンドとオーケストラが創り出す音の相乗効果で、SOPHIAの数々の名曲たちを一夜限りの極上の響きをもった新たなサウンドに仕立てて、観客に届けていった。

 開演前、シンフォニック・オーケストラのメンバーによるチューニングが終わると、SOPHIAのライブの始まりを告げる「愛の讃歌」が場内に流れ、マエストロ西山勝がヒマワリを胸元に挿して登壇。まずは、この日のためにSOPHIAの代表曲たちをオーケストラアレンジでつないだ「Overture」で観客たちを驚かせる。ステージが照明でブルーに染まり、「青空の破片」のイントロが流れ出すと真っ白いジャケットを着た松岡充(Vo.)がヒマワリを手にアリーナ席から登場。そのまま客席に留まり、バンドスタイルとは異なる滑らかな歌唱スタイルで体自体を楽器のように響かせ、歌を丁寧に放っていく。豊田和貴(Gt.)と黒柳能生(Ba.)、赤松芳朋(Dr.)と都啓一(Key.)は各々いつもの定位置とは逆のポジションに立ち、オーケストラの演奏に音を重ねていく。

 都がこの日は、スタインウェイのグランドピアノでイントロを奏でた「Eternal Flame」、客席一面にヒマワリ畑が広がった「ヒマワリ」。SOPHIAの名曲がオーケストラのダイナミックかつ繊細なアンサンブルで、どんどん輝きを増していく。松岡がオーケストラとマエストロを紹介したあと、舞台上はSOPHIAのメンバーだけの空間となり、ライブはバンドゾーンへと突入。「いくぞ大阪!」と松岡が客席を煽り、観客が椅子から立ち上がったところで「蜘蛛と蝙蝠」がスタート。松岡はバンドの歌唱スタイルに戻し、都もここからはいつものキーボードセットを演奏。観客がジャンプしながら一斉に手をクルクル回す「KURU KURU」、赤松のハイハットに黒柳がベースを乗せ、次に都がキーボード、豊田がギターリフを次々と重ねていくスリリングな展開から始まったロックンロールな「brother&sister」をプレイすると、観客のボルテージは急上昇。会場はたちまち一体感と熱気に包まれていく。

 このあと、松岡は今回初めてフルオーケストラとの共演に挑戦してみて「自分たちが創った曲でもオーケストラアレンジが施されたものを聴くと心がぎゅーとなります。歌はないけど、音楽だけで涙が出る思いになる」と感動を言葉で表し、それを受けて「この音楽の力をみなさんにお届けしたかったし、音楽の力でいろんなことを変えられるんや、ネガティブをポジティブに変えられるというのを感じとってもらって、今日は帰って欲しいなと思います」と伝えた。そうして「この曲があったから、この曲を信じることができたからSOPHIAは走り続けてこれた。一緒に歌ってください」といってSOPHIAの始まりの曲「Believe」をバンドゾーンの締めくくりとしてパフォーマンス。会場内には観客一丸となった大合唱が広がっていった。

 場内が暗転すると、このあと「Replay」が始まり、ライブは再びオーケストラとのコラボステージゾーンへ。SOPHIAのなかでもかなりレアな選曲となったこの楽曲は、スクリーンに歌詞を投影。歌詞の繊細な部分まで掘り下げ、分解していってスポットを当てて表現したような複雑怪奇な立体的音像は、どこまでもシネマティック。聴き手をすっぽりとその世界観へと引き込み、オーケストラアレンジの醍醐味、奥深さで、SOPHIAの楽曲を音で解読しているような感覚に浸せていったところは、今回のライブ最大のハイライト。SOPHIAとオーケストラの美しき融合が、音楽が持つパワーや、価値あるケミストリーを目の前で引き起こしていった場面だった。続けて、カルテットの演奏からど迫力のオーケストラへの切り替わり、そこから一瞬の静けさのなかに松岡の独唱が立ち上がるなど、楽曲のシーンをバランスよく表現していった「Place~」、ドラマチックな始まりから甘酸っぱさを倍増させるようなアレンジで、聴き手の記憶の奥深いところまでくすぐっていった「one summer day」。ここのブロックでは、オーケストラと SOPHIA の楽曲が魂と魂の交流を繰り広げるようにディープなところでコンタクトすることによって、その化学反応でバンド単体では到達できない音像や繊細な響きを創り出し、観客に今後のSOPHIAの新たな可能性、進化のベクトルを示していった。

 このあとは5人のトークが始まり、都からは今日使用しているピアノが、年に1度、同会場で行われる師走恒例巨大イベント『1万人の第九』で使われているものだと明かされた。「そんなピアノを弾かせていただけるのは本当に光栄。SOPHIAでまさかこういうことができるとは。だから、もっともっとSOPHIAは成長していけるんじゃないかなと思ってます」と手応えを話した。
赤松は、曲始まりや終わりのタイミングを松岡ではなく、指揮者に合わせてやるところが「難しいですね」といいながらも「けど、本当に新鮮です」と笑顔を浮かべた。豊田は「友達が増えたというか。仲間が増えて。このメンバーでやると必殺技のオンパレードみたいなところがあってすごい楽しい」と自身の感性溢れる表現で感想を述べ、メンバーと客席に笑いを誘った。黒柳はオーケストラには「べースパートの方々もいらっしゃる訳で」と前置きしたあと「その方々の演奏力の高さとアレンジ力の高さ。
それにしびれっぱなしです」とリスペクトの気持ちを伝えた。

 そのあと松岡は、今回のライブが2年連続する結成30周年&デビュー30周年のアニバーサリーイヤーのスタートのライブとなることを発表。「そして、ここから2024年が結成30周年、2025年がデビュー30周年です。いまこの2024年は滑走路に一歩踏み込んだ感じです。一番最初、滑走路に入るときってすごく大事じゃないですか。なので、これほど大きなチャレンジをさせて頂いておる訳です」と、今回のライブに挑んだ意図を解説。そして「まだ詳しいことはいえないですけど、4月の頭ぐらいに大発表します。ずらっと発表します。楽しみにしててください」と今後のアニバーサリーイヤーの活動を興奮気味なテンションで予告すると、客席は歓喜に包まれた。さらに、復活したSOPHIAがその第1弾作品として古巣のトイズファクトリーと手を組み、現在配信している新曲「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」についても、「今は配信リリースだけですけど、実は違うんです。あの曲をフラッグにして 2024年は進んでいきます」といって、この楽曲が今年から始まる30周年イヤーを牽引していくナンバーになることを高らかに宣言した。その宣言を受けて、ライブは新曲「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」のアクトへ。原曲のガムランのパートをオーケストラの美しいチャイムが鳴り響くなか、ストリングスの音が躍動。ゆったりと心に語りかけるような雰囲気のイントロから放たれた「in the future」、赤松のドラムのカウントを聴いて、観客がすぐさま席から立ち上がり、次に「街」が始まると、松岡は再びアリーナ席に降りていく。客席にマイクを向けると、観客たちは曲中、高らかに声を響かせ、メンバー名前を大声でコール。オーケストラが奏でる豪華サウンドにSOPHIAのロックサウンド、松岡の歌唱にメンバー全員のコーラス、観客全員の合唱までそこに加わるという夢のような共演で、この日もっともパワフルで情熱的な音楽を大阪城ホールに響かせていった。

 そうして、次は、子供の頃に音楽のパワーに心震わされて、“よし、俺たちも何か歌えるんじゃないか、楽器を弾けるんじゃないか、バンドを組めるんじゃないか、たくさんの人に伝えられるんじゃないか”と始まった SOPHIA に、あのときに震えた音楽の感動、その原点を再確認するきっかけとなった「夢」をパフォーマンス。SOPHIA とシンフォニック・オーケストラが出会い、ここまで彼らを突き動かしてきた<夢>が目の前で形になっていったこの瞬間、観客たちはクラップ音と合唱でその空間に加わり、会場はなんともいえない達成感と多幸感に満ちた空気に包まれていった。演奏が終わったあと「SOPHIAとシンフォニック・オーケストラのみなさん、そしてマエストロ西山勝に大きな拍手を」と締めの挨拶を告げた松岡だったが「音楽に心震わして、同じ音楽の世界にいて対極にあるようなロックバンドとクラシックオーケストラ。せっかくその点と点が近寄ったので、もう1曲だけみなさんのお力を貸して欲しいとわがままを言いまして、フルアレンジをして頂きました」といって、最後に演奏が始まったのはベートーヴェンの「交響曲第9番」だった。誰もが知るあの旋律を、華麗で重厚なアンサンブルで聴かせる。これを序章として、始まったのは「黒いブーツ~oh my friend~」だった。観客たちが大熱狂しながら踊るなか、間奏で都のソロパートがやってくると、“第九”の謎が溶け、クラシックとロックの点と点が見事に線でつながり、交響しあうというSOPHIAならではのエンタテインメントな音楽の仕掛けで、ライブは大団円のなかフィニッシュを迎えた。

「SOPHIAの音楽人生にまた1つ、輝く星を見つけることができました」といってライブを締めくくった松岡は「いい30周年のスタートができたと思います。ここから2025年まで、どうかよろしくお願いします」という言葉を残して、ステージを後にした。
こうして30周年イヤーのスタートを飾る挑戦を大成功させて、アニバーサリーイヤーを開幕したSOPHIA。4月に発表を控えてい
る周年に向けた活動に、期待は高まるばかり。


TEXT 東條祥恵
PHOTO ハヤシマコ

◎公演情報
【SOPHIA Premium Symphonic Night in 大阪城ホール
2024年3月10日(日)大阪・大阪城ホール
出演: SOPHIA / The Symphonic Orchestra