ヨウコさんも友人も、英語はほとんど話せなかったので、「最低限これだけは接客中に必要だから覚えて」という会話や単語が記されたカードを店からもらい、暗記するように言われた。
「あと、翻訳アプリとかGoogle翻訳を使ったりすれば、何とかコミュニケーションはできる。妙に口説かれることもないし、嫌なことを言われてもわからないし、言葉が通じないのって、風俗の仕事をするうえでは、意外と精神的に楽なんだと知りました」
宿泊先は、店が借り上げているシェアハウスで、店で働く女性たちと共同生活を送った。シェアハウスに宿泊しなければならないというルールはないが、宿泊費は光熱費、インターネット代込みで日本円で1日約3千円と、ホテルより格段に安いため、店で働く女性たちの多くがシェアハウスを利用していた。個室は一人一室与えられ、バスルームとキッチンが共用。ヨウコさんが過ごしたシェアハウスは、10畳ほどの個室が5~6部屋あり、浴槽付きの広いバスルームとキッチンが付いた作りだった。キッチンには一通りの調理器具や冷蔵庫、皿類などが備え付けられているため、自炊も可能だ。
「シェアハウスで共同生活って、ちょっと留学したような気分を味わえるというか、旅行にはない楽しみがありました。店で働く女性はアジア系がほとんどでしたが、いろんな国から来ているので、それぞれのお国料理を作って食べたりしたのも楽しかった。店に訪れる客は、中国系の観光客が多かったですが、なかにはオーストラリア人もいました。店はウェブサイトなどを通じた集客もしていましたが、顔出しは完全自由なので、身バレするリスクはほとんどない。報酬のバック率も日本より高いし、日本のように店からタオル代やローション代などの経費を引かれることもないし、明朗会計で働きやすかった」