元朝日新聞記者でアフロヘアーがトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。
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もうコロナ禍の日常がほとんど思い出せない今日この頃だが(忘れっぽさの程度が酷すぎる……)、先日、長い間中断していた京都の燗酒イベントがようやく再開され、久しぶりにあの苦しかった期間を思い出した。
何しろ、そこで会う人会う人の懐かしさと言ったら! あ、これにはちょっと説明が必要ですね。我ら「燗酒好き」の世界は大変に狭く、このようなイベントに行くとお馴染みの面々が全国津々浦々から大集結するのである。なので突然のコロナ襲来の結果、そのようにしょっちゅう会っていた我らは突然、一切顔を合わせることができなくなったのだ。
というわけで、誰を見ても「いやーん久しぶりー!」「元気だったー?」とハグの嵐。もちろん、中にはちょっと苦手な人、あんまり気の合わない人だっているわけだが、この日ばかりはそんなことは関係なし! っていうか、久しぶりすぎてもはやそれもちゃんと覚えていない(笑)。まあイイのよそんなことはどうだって。どんなやつであれ、人が「会う」ことそのものが嬉しいことなのだ。貴重なことなのだ。それを、コロナほど教えてくれたものはないのかもしれないですね。