期待を背負って臨んだユース五輪(1~2月、韓国)だったが、ショート冒頭のトリプルアクセルで着氷が乱れ、ルッツが1回転になり無得点に。さらにスピンでも転倒して得点を得られず、演技後リンクサイドで誠人コーチに迎えられると泣き崩れた。優勝候補だった中田だが、13位という思いがけない位置でフリーを迎えることになった。
しかしフリーで、中田は本来の力をみせる。冒頭の4回転トウループの着氷が乱れるなどいくつかミスはあったものの演技をまとめ、フリーだけの順位は2位。総合でも5位まで順位を上げた。
ジュニアグランプリファイナル・ユース五輪の両大会で、中田はショートでの出遅れをフリーで挽回する戦いぶりをみせてきた。フリーでの強さが際立つだけに、世界ジュニア選手権ではショートが鍵になるかもしれない。好位置でフリーを迎えることができれば、金メダル獲得の可能性は高い。
ジュニアグランプリファイナルの記者会見で、中田は「4回転やトリプルアクセルは、すごくジュニアで重要」と口にしている。
「跳ばないと勝てないので、来シーズンはもっと4回転を増やして、もっと点数を出せたらなと思います」
その言葉通り中田は1月29日、自身のSNSに、ユース五輪を振り返り世界ジュニア選手権に向け意気込む言葉と共に、4回転ループを着氷させる動画をあげている。
悔しさも糧にしてスケートを磨き続ける若き逸材・中田璃士は、台湾で再びジュニアの頂点を目指す。(文・沢田聡子)
沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」