学生時代には食事の場で、胡椒が出ないときに「故障(こしょう)かな!?」とつぶやかれたり、夏のご静養に向かう那須塩原駅でハンカチで汗をぬぐわれ、「ハンカチ王子」といわれたこともある。

 インドネシア訪問に話を戻すと、ジャワ島中部の仏教遺跡「ボロブドゥール寺院」を訪れたときのことだ。寺院を熱心に見て回られたあと、全日程を終えられ囲み取材に応じられた。

サンダルの質問に笑顔

 そのときの天皇陛下のいでたちは、インドネシアの伝統的な布地・バティックのシャツにサンダル履き。サンダルは遺跡を傷つけないためのものだった。

 インドネシア訪問を振り返る質問に真摯に答えられる天皇陛下に、記者から「サンダルはいかがでしたか?」と、変化球の質問が飛んだ。

「サンダルは……思っていたよりも履き心地が良かったです」

 と、笑い声を出しながら、優しい表情で答えられた。天皇陛下の珍しいサンダル姿とその答えで場が和み、そして、「ひと言付け加えさせていただければ……」と、サンダルを履くことが遺跡保存につながる大切さを語られた。

世界遺産のボロブドゥール遺跡を見学し、報道陣に手を振る天皇陛下=2023年6月22日、インドネシア・ジョクジャカルタ郊外

 天皇陛下のフラットな会話が聞ける場といえば、園遊会だろう。春の園遊会は2018年以来4年半ぶり、令和になって初めて開催された。秋の園遊会もコロナ禍や代替わり行事のために5年ぶりだった。

園遊会に出席し、将棋棋士の加藤一二三さん夫妻(右手前)ら招待者と話す天皇、皇后両陛下=2023年11月2日

 秋の園遊会の招待者のひとり、加藤一二三氏がを飼っている話を聞きながら、天皇陛下は、

「ここにも猫がいるんですよ」

 と、園遊会が開催された赤坂御苑の敷地を手で指し示された。

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