学生時代には食事の場で、胡椒が出ないときに「故障(こしょう)かな!?」とつぶやかれたり、夏のご静養に向かう那須塩原駅でハンカチで汗をぬぐわれ、「ハンカチ王子」といわれたこともある。
インドネシア訪問に話を戻すと、ジャワ島中部の仏教遺跡「ボロブドゥール寺院」を訪れたときのことだ。寺院を熱心に見て回られたあと、全日程を終えられ囲み取材に応じられた。
サンダルの質問に笑顔
そのときの天皇陛下のいでたちは、インドネシアの伝統的な布地・バティックのシャツにサンダル履き。サンダルは遺跡を傷つけないためのものだった。
インドネシア訪問を振り返る質問に真摯に答えられる天皇陛下に、記者から「サンダルはいかがでしたか?」と、変化球の質問が飛んだ。
「サンダルは……思っていたよりも履き心地が良かったです」
と、笑い声を出しながら、優しい表情で答えられた。天皇陛下の珍しいサンダル姿とその答えで場が和み、そして、「ひと言付け加えさせていただければ……」と、サンダルを履くことが遺跡保存につながる大切さを語られた。
天皇陛下のフラットな会話が聞ける場といえば、園遊会だろう。春の園遊会は2018年以来4年半ぶり、令和になって初めて開催された。秋の園遊会もコロナ禍や代替わり行事のために5年ぶりだった。
秋の園遊会の招待者のひとり、加藤一二三氏が猫を飼っている話を聞きながら、天皇陛下は、
「ここにも猫がいるんですよ」
と、園遊会が開催された赤坂御苑の敷地を手で指し示された。