本のなかで明らかにされるのは、アメリカをはじめとする国際社会の二重基準だ。ロシアによるウクライナ侵攻で、国際刑事裁判所(ICC)は迅速に動き、プーチン大統領に対して戦争犯罪の容疑で逮捕状を出した。その一方、「2014年に起きたイスラエルによるガザへの攻撃を、戦争犯罪として調査してほしい」というパレスチナ側の要求にICCが応えるまで、5年もかかっている。

「ICCが調査すると決めてからも、ずっと調査は棚上げです。今、ガザでパレスチナ人のジェノサイドをおこなっているのはイスラエルですが、それを可能にしたのは、イスラエル不処罰という国際社会の『伝統』です」

 植民地支配の歴史は日本にもある。決して他人事ではないパレスチナの状況に、私たちは何ができるだろう。

「今の状況を変えるために、『やらなければならない』ことはたくさんあります。抗議活動をして『ジェノサイドは許さない』と意思を示すことはとても重要です。パレスチナの問題は現代世界のありようとそこに生きる私たちにつながっています」

(ライター・矢内裕子)

AERA 2024年2月26日号