捜査機関による不当な取り調べを防ぐ一つの手だてが、取り調べの可視化だ。刑事訴訟法が改正されて19年6月から取り調べの録音・録画が始まった。江口氏の取り調べ内容が明らかになったのもこの制度のおかげだ。だが、対象は裁判員裁判対象事件と検察官独自捜査事件にとどまる。誰が見ても適正な取り調べが進むようにするにはどうすれば良いのか。刑事弁護や黙秘権に詳しい坂本一誠(いっせい)弁護士がこう指摘する。

「全面的な取り調べの可視化と、黙秘権を行使したら取り調べを打ち切ることが必要です。黙秘をしているにもかかわらず強引な取り調べを続けて得られた供述は任意性に疑いが残り、冤罪を生みかねません」

 江口氏は国賠訴訟を提起した理由をこう話した。

「黙秘や否認する被疑者への取り調べは事実上、無制限に続けられる状態が野放しになっています。しかし、憲法が黙秘権を定めている以上、黙秘する意思が明確であれば取り調べを続けるのは許されるのか。裁判では黙秘権の保障が形骸化していることを訴えたい」

(ジャーナリスト・形山昌由)

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検察官による実際の取り調べ動画(13分30秒)はこちら