外務省在外研修のため、オックスフォード大学ベーリオールカレッジに入学した雅子さま=1988年10月
外務省在外研修のため、オックスフォード大学ベーリオールカレッジに入学した雅子さま=1988年10月

 ゆるやかな緑の傾斜地を振り返りながら上ると、オックスフォードの古いカレッジの建物や教会の尖塔群を望むことができる。黄昏時に建物が霞の上に浮かぶ神秘的な瞬間を、人々はドリーミング・スパイアーズ(dreaming spires)と呼ぶのだという。

 陛下は、懐かしそうな口調で林さんにこう説明した。

「本(『テムズとともに』)に載せたドリーミング・スパイアーズの写真は、わたしがこの場所で撮影したものです」

皇后同席のスタイルへ

 オックスフォード大学での経験は、陛下に大きな影響を与えた。そのひとつが、伝統を尊重しながら新しい価値観を取り入れる姿勢だ。

 著書でも、そんな心境がつづられている。

「オックスフォードの学生は、伝統をどう見ているのだろうか。また、伝統と新しいものの共存をどうみているのだろうか」

 陛下は皇太子時代から、「時代に即した公務の在り方」という言葉に何度も言及しており、皇室メンバーとしての生き方にも変化をもたらした。

 昭和から平成の前半にかけて、反皇室を掲げる過激派組織などによる事件が頻発した。皇室は国民の信頼と敬愛を何より大切にしてきた。その結果、天皇と皇族は、家族や私的な時間である「私」よりも、公務や皇室としての責任といった「公」を優先してきた。

 そして平成も後半になると過激派などの活動も影をひそめた。そうした変化とともに皇室も変わった。陛下は皇太子の時代から、雅子さまや長女の愛子さまとの家族の時間を、より大切にするようになった。

 天皇と皇后との関係も変わった。たとえばご進講のスタイルだ。平成では天皇と皇后で別だったご進講を、令和では一緒に受けるようになった。

「上皇后陛下は『天皇へのご進講は国の重要な仕事なので、皇后は同席すべきではない』というお考えだったのではないでしょうか。一方、一緒に受けておられる令和の両陛下には、新しい感覚を感じます」(元宮内庁職員)

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「雅子とともに訪れたい」