結局高2くらいまではそんな感じだったんですが、ひとつ下の学年にものすごく強い後輩がいて、直接対決して何度も負けていたので、それでモチベーションが低下して高2の秋に部活を引退。今思えばその後輩とバチバチに争えていたら、うまく受験勉強モードに切り替えられなかったかもしれません。当時はみじめさでいっぱいで、逃げるように受験勉強に入っていきましたけど……。

クイズのありのままの楽しさを伝えたい

 ちなみに、クイズで学んだ知識はほとんど大学受験には役に立ちません。クイズのほうが、範囲が広いので。でも、クイズを続け、目標に向かう中で、自分に向いている努力の方法や、自分の性格についてより客観的に知ることができたのは大きな財産でした。部活全般に打ち込むことの価値はこういうところにもあるのかなと思います。

 クイズと出合ってから15年経ちました。他に楽しいことをたくさん知ったし、たくさん試してきたけれど、なおのことクイズへの情熱は尽きません。

 僕はクイズから「クイズは楽しい」という体験をもらいました。他のなにかに役に立ってほしいなんて高望みはしません。クイズがクイズである、これだけで幸せです。そのことに感謝して、多くの人たちにクイズのありのままの楽しさ、学びを楽しむことを伝えていきたいです。

いざわ・たくし

1994年生まれ。埼玉県出身。私立暁星小学校、私立開成中学校・高等学校を経て東京大学経済学部卒業。クイズ番組のクイズプレーヤーや情報番組のコメンテーターとして活躍中。16年に立ち上げたWebメディア「QuizKnock」で編集長を務めた。19年に株式会社QuizKnockを設立。社長に就任。自身の経験をいかした勉強法のアドバイスや講演なども行う。著書多数。最新刊に『クイズ思考の解体』(朝日新聞出版)

(取材・文/AERA with Kids編集部)

AERA with Kids2021年秋号より