「英語での会話でも、センシティブな話題のときは相手を配慮するフレーズを使います」と廣津留さん(撮影/吉松伸太郎)

 そういうちょっとした行動を自分ひとりから始めて、だんだんと身近なコミュニティーや組織に広げられるといいですよね。私はいま大分市の教育委員を務めているのですが、会議に必要な資料を紙ではなくデジタル端末で共有する提案をしてみたところ、ありがたいことに快く受け入れてくださいました。紙やインクを消費しないだけでなく、印刷にかかる職員の方の労力的・時間的コストも減るので、良い変化だと思っています。

 日常生活の中での「あそこ、良い方向に変えられるかも」を何か見つけてみる。それで、自分の家族にだけ、あるいは会社の隣の席の人にだけでも伝わったらいいなと思うんです。ちょっとでも人に影響を与えることを繰り返していけば、問題意識も広がっていくし、それぞれの行動も自ずと変わっていくのではという希望を持っています。

Q. 意見が違っていたら関係が気まずくなるのではないかと思ってしまい、社会問題や政治について友人・知人と話すことに抵抗があります。廣津留さんがふだん、友達と社会問題や政治について話すとき、何か気をつけていることがあれば教えてください。

A. これは結構気をつけていまして、話すときに「素朴な疑問なんだけど」「いろんな人に意見を聞いているんだけど」「話せる範囲でいいんだけど」など、必ず最初に前置きのワンクッションを挟むようにしています。相手にも質問内容がちょっと柔らかく聞こえるからです。日本語と比べてコミュニケーションがストレートだといわれる英語での会話でも、センシティブな話題のときは“Only if you feel comfortable, you can talk to me”など、相手を配慮するフレーズを使います。

 また、「私は絶対こうだと思うんだけど……」と自分の意見を押し付けるような形で始めないことも大事かなと思います。意見を先に強く言われてしまうと、相手はなかなか本音を言い出せなくなってしまいますよね。「個人の一意見として聞いてほしいんだけど、私はこう思う」など言い方を工夫してみるようにしています。

 もう一つ心がけているのは、いろいろな人の意見を聞いたとしても、それらはあくまでも一つの視点にすぎないという認識を持つようにすること。すべての意見を受け入れる必要はないと思っています。人から聞いた意見を鵜呑みにして、それをまた別の人に吹聴してしまうと、トラブルになりかねません。どんなに信頼できる友人や知人から聞いた話であっても、一次情報でない場合は一つの考えとして心に留めておくことが大事だと思っています。

構成/岩本恵美 衣装協力/BEAMS

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