AERA 2024年2月12日号

 塾でも叱りづらくなった。ある塾講師の女性は、「この1~2年でさらに叱れない状況になった」と打ち明ける。近年さまざまなハラスメントが注目され、保護者の目も厳しくなった。さらに講師が日常的にマスクを着用するようになると、複数の保護者から「マスクをした状態で叱られると表情が分からず怖がってしまうので叱らないでください」と言われるようになった。

「マスク社会とハラスメントへの関心の高まりが同時に来て、従来通りの指導が難しくなりました。指導者としてもっと真剣に思いを伝えたいですが、それがハラスメントだと捉えられてしまうと、強く伝えられず諭すしかありません。でもこれでは必死さが伝わらないような気がしています」と唇をかむ。

 当の子どもたちは、叱られることを拒んでいるのだろうか。前出の男性教諭は赴任先の学校が荒れていたため、まず信頼関係を築くことに注力した。叱るためにたくさん褒めることを続けると、子どもたちとの距離が縮まり、叱った内容が子どもたちの心に響くようになった。男性教諭は言う。

「子どもたちにアンケートを取ると、意外と厳しい先生が人気なんです。きっと自分のことを本気で叱って、本気で認めてくれる人は信頼できると感じるのでしょう。そういう大人や仲間に出会えることが大切なのかなと思います」

(ライター・大楽眞衣子、フリーランス記者・宮本さおり)

AERA 2024年2月12日号より抜粋

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