20枚目のシングル「AL-MAUJ (アルマージ)」(ファン私物/撮影・中村隆太郎)

■「AL-MAUJ ~アルマージ~」(1988年1月27日リリース/作詞・大津あきら 作曲・佐藤隆 編曲・武部聡志)

『AL-MAUJ ~アルマージ~』は歌唱力が際立つ曲だ。

「リリースの翌年89年に行われた、よみうりランドEASTでのライブでは『伝説のコンサート』と呼ばれています。

 このライブは中森明菜のコンディションもよく、歌怪獣というか声怪獣の中森明菜が吠えまくる、という印象。なかでも、『AL-MAUJ ~アルマージ~』はベストテイクといってよく、爆発的でした。最高だと思います。私が中森明菜の著書の紹介でラジオ番組に出演するときは毎回、これをかけています」

■『水に挿した花』(1990年11月6日リリース/作詞・只野菜摘 作曲・広谷順子 編曲西平彰)

 最後にあげる1曲は「80年代中森明菜の本質的な総括」と評する、『水に挿した花』だ。

「この曲もラジオ出演の際は、必ず毎回かけます。この曲こそ、80年代に中森明菜が繰り広げた数々の実験や挑戦でたどりついた純粋音楽の世界。それは、一見危うくて、儚い、だからこそ美しい」

中森明菜をいま聴いても新しいワケ

 ここに挙げた3曲以外にも、中森明菜を堪能できる楽曲はまだあるという。スージー鈴木氏は、中森明菜がいま聴いても新しい理由をこうまとめる。

「中森明菜は、当時の“東京”という都市と闘っていたのではないかと思うんです。バブル景気で世間は浮かれているけれども、やっぱり男社会でまだまだ女性の立場や権利が弱いなか、中森明菜が細腕1本で音楽シーンを席巻する。

 もちろん、個々の楽曲の音楽性もあるけど、闘う中森明菜の格好よさにみんな惹かれるのではないかと思う。

 そこから30年以上経っているんですが、格好いい女性というのは日本の音楽シーンでは決して多くない。80年代にすでに格好いい女性像を確立した中森明菜は、もっと語られるべきだと思う」

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地道に地味に復帰を願う