春は桜、夏は川床、秋は紅葉と、京都は季節を楽しめる土地だが、人出が多すぎて情緒どころじゃない……という人にオススメなのが今の時期だ。冬は素顔の京都が見えてくる。AERA2024年2月5日号より。
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年末年始が過ぎ、桜の見頃を迎える春までの間、京都の街は少しだけ“休息モード”に入る。
季節ごとに異なる魅力を放つ街だが、年間通し最も人出が少ないのが、1月から2月なのだという。
「普段は人が多くゆっくり見ることのできないスポットで過ごしたり、なかなか予約の取れないお店に立ち寄ることができたり。それが冬の一番のメリットだと思います」
そう話すのは、『もっと、京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)を出版した京都在住のライターの大橋知沙さん。澄んだ空気を肌で感じ、少しずつ夜が明けていく様を目にすることができるのも、冬の朝ならではの魅力だという。「京都の冬の朝を感じられるスポット」として、大橋さんが挙げたのが「coffee stand微光」だ。オープンは朝の5時。場所は、京都市中央卸売市場。食材を求めやってくる料理人たちの息遣いを感じながら、淹(い)れたての温かいコーヒーを手に暖を取ることができる。
「その場で一杯飲み出勤される方もいれば、中央卸売市場内の食事スポットを目当てに訪れる旅行者の方が朝の一杯を求めていらっしゃることもあるようです。市場特有の雰囲気を感じられる場所だと思います」
贅沢な大人のお篭り
凍(い)てつくような寒さが身にしみる季節。ひんやりと冷たい風から逃れるように、室内で楽しめるスポットを旅の予定に入れてみるのも一案だ。「鈍考/喫茶 芳」は、ブックディレクターの幅允孝(よしたか)さんとパートナーのファンさん(愛称)が店主を務める私設図書室と喫茶スペース。90分の時間制で、幅さんの蔵書を自由に読むことができる。
「本好きな人なら、あっという間に時間が経(た)ってしまう。『時間が足りないな、もっと居たいな』と思える場所です」(大橋さん)
予約制で、一日あたりの人数を限定しているため、混み合うこともない。過ぎゆく時間に身を委ね、心を解放し、大きな窓を通して季節を感じる。“大人のお篭り”にふさわしい、なんとも贅沢(ぜいたく)な空間だ。