話している相手と「会話のズレ」を感じたことはありませんか? 話がかみ合わないとお互いストレスになってしまいますし、仕事関係なら信頼を失う可能性だってあります。書籍『キミが信頼されないのは話が「ズレてる」だけなんだ』の著者で、経営コンサルタントの横山信弘さんは、同書で「若手からベテランまで、寄せられた悩みの圧倒的多数が『会話のズレ』に関することなのだ」と記します。
ではなぜ会話がズレるのでしょうか。その主な原因は「どちらかが『ぼんやり』とした話し方をするからだ」と横山さん。「ぼんやりとした話し方」として同書に以下の会話が登場します。
A「Bくん、これできるだけ早くお願いできる?」
B(わっ! すごい量だな)
「わかりました! なるべく早く頑張ります!」
(2週間くらいでできるかな)
A(2日後くらいにくれるだろう......)(同書より)
このまま仕事を進めてしまうと両者の認識に大きなズレが生じたままになってしまいます。そもそもの原因はAさんが「ぼんやりとした指示」を出したことにあるのに、AさんはBさんに対して「使えないヤツだな」なんて文句を言う結果になるかもしれません。それではBさんが不憫です。ただし、人間は頭に思い描いたことを100%相手に伝えられない生き物であるため、聞き手が意識的にしろ無意識的にしろ、上手に軌道修正することでスムーズな会話が成り立ちます。そこで、不憫なBさんのようにならないためにも、ぼんやりとした指示が出た時の対処法を学んでおきたいところです。
横山さんいわく、話のズレを補正するにはズレの原因となる「3つのパターン」を覚えておくことが大事。その3つとは「1、反射。2、思い込み。3、知識不足」(同書より)です。
まず1つ目の「反射」。先ほどの会話であれば「できるだけ早くお願いできる?」と訊かれて反射的に「わかりました!」と答えてしまうことを指します。新人時代にやりがちなミスかもしれません。上司にやる気のある人間だと思われたくてつい二つ返事で答えてしまった経験はありませんか?
しかしこれでは「反射的に口にしてしまうので、確認するタイミングを失ってしまう」(同書より)という事態に陥ります。反射的に返事をする前に「相手の指示は、あいまいではないか?」「言い足りないことはないか?」(同書より)を確認するよう心掛けるだけで、ズレを回避できるようになります。
2つ目の「思い込み」では、以下の会話を例に紹介しています。
A「仕事に役立つ勉強をしてほしい」
B「わかりました。そうします」
A「ところで仕事に役立つ勉強って何かわかる?」
B「もちろん、わかってます」(同書より)
1つ目の「反射」パターンであれば、Aさんが「ところで~」と問いかけた時点でBさんが「いえ、実はわかりません」と答えられてズレを回避できます。しかし「思い込み」の場合、軌道修正が難しくなります。AさんとBさんの間に認識の違いがあるのに、その認識を共有していないため補正ができないのです。これを改善するには「丁寧に話すクセ」をつけることが重要だと横山さん。会話例ではBさんが「もちろん、わかってます」と言ったあとに「仕事に役立つ勉強とは何か」を説明していたらズレを回避できたはずです。
ただし、横山さんは「丁寧に話すクセ」を身に着ける上で問題になる"日本人特有の話し方"に言及します。
「意外と多いのが、最後までハッキリ言わない話し方だ。日本人はセンテンスの最後に述語を置く習慣がある。主語と述語が遠いだけでもわかりづらくなるのに、その最後の述語を言わず、相手に委ねてしまう人も多い」(同書より)
「資料をメールで送りましたので、チェックしてもらえませんか?」と言うべきところ、「資料をメールで送りましたので......」で終わらせてしまっていませんか? 横山さんは「これではとても雑だ。もっと丁寧に話そう」と指摘します。
最後に3つ目の「知識不足」です。専門職でなくとも仕事には特有の言い回しややりとりがあるため、日々勉強を重ねるほかないのですが、それに加えて「質問力」も必要だと横山さん。「日ごろから効果的な質問をするクセを身につければ、何も怖くない」(同書より)とアドバイスします。同書には効果的な質問の仕方や相手の話を引き出す上手な相槌の打ち方なども紹介されています。
このように、すぐにできて効果が出やすい方法が42個も登場する同書。横山さんいわく「これから社会人になる人はもちろん、仕事で活躍中の人や転職しようと考えている人に役立つ内容になっている」とのこと。人との会話に違和感を覚えたことがある人なら読んでおいて損はないでしょう。自身の話し方の反省にもつながりますし、かわいい4コマ漫画とともに楽しく学べるのでおすすめです。
[文・春夏冬つかさ]