過去に衆院選に出馬し、政治資金収支報告書も提出した経験がある元検事の落合洋司弁護士はこう話す。
「元東京高検検事長の黒川弘務氏の定年延長、桜を見る会、森友学園と、安倍政権で起きた問題で、検察はやられっぱなしの感じだった。今回、安倍派を最大のターゲットにしているのは、一矢報いたいという思いがあるのではないか。現状の報道などを見ても、会計責任者程度なら政治資金規正法違反容疑で立件できるでしょう。ポイントは、キックバックが多かった国会議員よりもさらに上の事務総長クラスの共謀を立証できるかどうか。おそらく安倍派側は『事務方に任せていた』などと言って共謀はなかったと主張するはず。そこを特捜部が突破できるか」
ロッキード、リクルート事件並みの可能性も?
宏池会(岸田派)のスタッフから自民党本部で政務調査役を20年以上経験した政治評論家の田村重信氏は、
「政治資金規正法は『規制』ではなく『規正』。正しいという字が使われています。いわゆる政治家の性善説、きちんとやるはずという前提です。私が宏池会にいたときは、今とはルールが違う古い時代の話ですが、派閥のパーティー券を現金で払う人も多かったけど、それなりに収支はきちんとしていた記憶があります」
と振り返りつつ、今回の捜査についてこう語った。
「自民党の知り合いと話すと、特捜部が動かざるを得ないほどやりすぎた感がある。もう性善説とは言い難い。大物の国会議員が立件されるとなれば、古くはロッキード事件やリクルート事件並みの大スキャンダルになりかねません。どちらの事件も総理大臣の進退にかかわった。今回も岸田政権を大きく揺るがすことになりかねない」
(AERA dot.編集部・今西憲之)