取締役会が「人類への貢献」を重視し、製品化を急ごうとするアルトマンを解雇した点は、そのミッションから見れば「正解」かもしれない。だが、ほぼ全社員が離反して退職してしまえば組織は存続できない。そこが取締役会の誤算だった。
一般消費者には「恩恵」
結局、解雇から5日目、トナーとサツキバー、そしてもうひとりの女性が取締役会を辞任し、アルトマンが再び同社CEOに返り咲いた。新取締役会メンバーには元ハーバード大総長ラリー・サマーズらが任命され、白人男性が集う「ボーイズクラブ」的な構成だ。今後、マイクロソフトからも投票権を持たないメンバーが取締役会に送り込まれる。アルトマンと共に同社に復帰したブロックマンは社員たちと写真を撮って喜び合った。
「この騒動の勝者は実はマイクロソフトだ」とジャルリアは語る。オープンAIはマイクロソフトのAzureクラウドと独占契約を結んでおり、関係性はすでに強力だが「オープンAIのAI技術を搭載した製品『マイクロソフト365コパイロット』はすでに市場に出たし、ナデラがこれまで投資を続けてきた成果が、今後加速して出る。その恩恵を被るのは一般消費者、特に一般のオフィスワーカーだ」とジャルリアは言う。
(文中敬称略)
(在米ジャーナリスト・長野美穂)
※AERA 2023年12月11日号
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