長尾和宏医師(写真左)と医療法人社団悠翔会理事長・診療部長の佐々木淳医師(同右)
写真/上田泰世(写真映像部)
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国内に24の診療拠点を持ち、非常勤含め約120人の医師が約8000人の在宅患者を24時間体制で診る医療法人社団悠翔会。理事長の佐々木淳医師は、たまたまアルバイトで在宅医療に触れたことをきっかけにこの世界に飛び込み、患者と家族の生活と人生観を大切にする医療を追求し続けてきた。

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好評発売中の週刊朝日ムック『さいごまで自宅で診てくれるいいお医者さん2024年版 在宅医療ガイド』では、そんな佐々木医師に、ベストセラー『「平穏死」10の条件』『痛くない死に方』などの著者で自らも28年間在宅医療に取り組んできた長尾和宏医師がインタビュー。これまでの取り組みと日本の在宅医療の現状について聞いた。前編に続き、後編をお届けする。

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日本の各地域における在宅医療の現状とは

長尾 悠翔会のクリニックは、首都圏とその近郊のほか、沖縄本島や石垣島、鹿児島県の与論島などの離島にもありますが、地域により在宅医療や患者さんの傾向などに違いはありますか?

佐々木 首都圏でも東京と近県では違いますね。例えば、都内では昔から在宅医療が活用されていて、多職種連携もしっかり行われていたので、患者さんやご家族も在宅医療を使い慣れています。「合わない医師がいれば変えればいい」ぐらいの気持ちでいる方も多く、ニーズに合った在宅医療をみなさん上手に活用しています。一方、近県では都内ほど使い慣れていなくて、患者さんやご家族は「24時間の在宅医療ってすばらしい」「先生が家に来てくれると安心する」という方が多いです。

 さらに地方に行くと、在宅医療の経験がない医療者、介護者や患者さんもまだ多く、このように首都圏でも都心に行くほど使いこなせているという違いがあります。沖縄は、都市部である那覇では在宅医療が普及していて多くの人が利用していますが、少し離れた町ではまだ訪問診療と往診の違いがわからない介護スタッフもいるほど、わりと極端な地域差があります。石垣島では、最初は「在宅医療って聞いたことはあるけど、訪問診療を依頼するのは初めてです」という方が多かったですが、あっという間に私たちのコンセプトが受け入れられて、診療所ができて2カ月で、すでに患者さんが約30人、看取りをした人も約20人となり、在宅医療のニーズがあったことを実感しました。

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与論島でも地域の在宅医療提供体制が整ってきた