イクイノックス(写真:伊藤 康夫/アフロ)

 先日に行われた天皇賞(秋)は、世界ランキング1位に君臨するイクイノックスが芝2000mを1分55秒2という衝撃的なレコードタイムで圧勝した。個人的には「勝ちタイムが速い=強い」とは思っていない(展開や馬場状態に左右されるため)が、超ハイペースを3番手追走から楽勝した勝ちっぷりは最強馬にふさわしいものだった。

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 オールドファンが「衝撃的なレコードタイム」と聞いて真っ先に思い出すのは、やはり伝説の「2:22.2」だろう。ホーリックスとオグリキャップの死闘の末に刻まれた1989年のジャパンカップだ。

 この年のジャパンカップはオグリキャップがマイルチャンピオンシップ勝利からの連闘という常識外れのローテーションで参戦(2着のバンブーメモリーも連闘)。そのオグリキャップをその年の有馬記念で負かしたイナリワン、天皇賞(秋)で破ったスーパークリークの「平成三強」が揃い踏みし、海外からは芝2400mの世界レコードを持つホークスターや前年にタマモクロス対オグリキャップに水を差す勝利を挙げたペイザバトラーなど豪華メンバーだった。

 その中でニュージーランドから参戦した牝馬のホーリックスは9番人気と脇役扱い。しかしレースではホークスターとイブンベイによる超ハイペースを3番手追走から先頭に立ち、オグリキャップの猛追を抑えてクビ差の勝利を収めた。2分22秒2の勝ちタイムは東京競馬場の改修後となる2005年のジャパンカップでアルカセットが2分22秒1をマークするまで16年間も残り続けていた。

 そのアルカセットの勝利から13年後。ジャパンカップでまたしても衝撃のレコードタイムが生まれた。主役は日本競馬史上に残る名牝アーモンドアイだ。この年に牝馬三冠を達成したアーモンドアイは、次なる目標に古馬を含む牡馬との対戦となるジャパンカップを選択。最内枠から2番手追走という、どちらかと言えば後方で脚をためて連勝してきたこれまでとは違うレース運びを見せる。

 逃げたキセキの1000m通過タイムは59秒9と決して速くはないペース。最後の直線に入っても鞍上のクリストフ・ルメール騎手はまだ仕掛けず、残り300mでようやくスパートする。あっさりとキセキをかわすと1馬身3/4差をつけてゴールしたアーモンドアイは、余力たっぷりに見えた勝利でアルカセットのレコードタイムを1秒以上も更新する2分20秒6というスーパーレコードをマークしてみせた。

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