今年もまた蚊に刺されてしまった〜!という方も、そろそろいらっしゃるのでは。昨年は『デング熱』の流行で、東京の代々木公園などが閉鎖される異例の事態となりました。人から人へうつることはなく蚊によってのみ感染し、現在ワクチンや治療薬のないデング熱。防ぐには、とにかく蚊に刺されないようにすること! 「6月は蚊の発生防止強化月間」とする東京都の講習会で、今から気をつけるべきポイントを聞いてきました。

気持ちのいい雨あがりですが・・・
気持ちのいい雨あがりですが・・・

日本国内でウイルス感染させるのは、ヒトスジシマカ!

現在、日本国内で「デングウイルス」を媒介するのは『ヒトスジシマカ』のみ。
あの、やや大きめで、白いシマシマ模様がある「ヤブ蚊」ですね。都市部の屋外に生息し、日中に活動するのが特徴です。血を吸うのは、メス。それも卵巣を発育させるためだけに吸血し、日常生活に必要な栄養分は花の蜜や果物などで補っているのだそうです。
デング熱の国内感染は、なんと約70年ぶり!「日本脳炎」など蚊が媒介する病気にかかる人はほとんどいなくなった日本。これまで蚊に対する警戒が、あまり必要とされませんでした。
ところが、グローバル化で人の行き来が増えるにつれ、感染症の「輸入」も避けられない状況に。昨年の流行は、海外で蚊に刺され日本で発症した人の「ウイルス入りの血」を吸った複数の蚊が別の人たちを吸血することで、感染が広がったと考えられます。唾液に入った痒み成分とともにウイルスを注入されてしまったわけですね。デング熱とは気づかず受診しなかった人も合わせると、報告の倍以上の感染者がいたのでは、ともいわれています。
ヒトスジシマカの飛翔距離は、せいぜい数メートル。人が近づくと、ふだんは葉っぱの裏にとまって休んでいる「吸血意欲のある蚊」たちが、それ〜!と5〜6分のうちに皆寄ってくるのです。つまり、代々木公園にいるヒトスジシマカは、ほぼ生まれも育ちも代々木公園・・・ということは、人が行く場所で蚊が生まれたり育ったりしないようにすれば、かなり感染リスクを減らせるのですね!

交尾するヒトスジシマカ。増えます!
交尾するヒトスジシマカ。増えます!

ハッピーバースディ梅雨〜♫の「水たまり」は危険スポット

雨があがると、家のまわりのあちこちに水が溜まっていませんか?
風で飛ばされてきたビニール袋。空き缶、プラスチック容器。ベランダのガーデニング用具やペットボトル。植木鉢の水受け皿。いろんなものに被せてあるシート。蚊は、そんなちょっとした「水たまり」で誕生します。
卵で数日〜数ヶ月、幼虫(ボウフラ)で7〜10日、サナギで3〜5日、成虫で約30日。水面ギリギリの壁面にひとつずつ産みつけられた卵は、もし水がなくなってもそのまま耐えて、次に水没したとき孵化するのだとか・・・。
飛んでいる蚊を捕まえるのは大変ですよね。夏が来る前に、卵や幼虫の時点で「水際」対応しましょう!
水が溜まるゴミは除去し、溜まり水は日向に捨てるかスポイトやスポンジで吸い取ってしまいます。容器の内側を定期的にブラシなどでこすり、卵を落とします。ジョウロやバケツは水が溜まらないようにふせておきます。水抜きが難しい庭の水盤や小さな池は、メダカなど魚を飼うとボウフラを食べてくれるそうですよ。
このような環境整備は、地域ぐるみで行うと効果が上がります。
空き地や竹薮などの窪みを砂で埋める、古タイヤに穴を空けて水を抜く、雨水マスに殺虫剤を投入する等々、蚊の誕生スポットをつくらないようにチェックします。成虫の駆除にも殺虫剤は非常に有効なのですが、使用の際はまわりの家や生きものに害がないよう配慮を忘れずに。自治体の相談窓口も利用しましょう。
これから夏の観光シーズン。「蚊に刺されにくい町」は、旅行者にとっても安心ですね。

おでかけ対策は? かかるとどんな症状が?

野山に行くときは、かならず長袖・長ズボンで。お墓参り・スポーツ・ガーデニングなど、夏の屋外活動には「虫除け」が欠かせません。顔や耳には、手のひらにスプレーしてつけます。市販品は年齢制限や使用量など注意書きをよく読みましょう。海外の虫除けは、たいてい日本のものより成分が強いようです。
蚊に刺されやすいのは、朝夕の涼しい時間帯。曇りの日は昼間でも多く、直射日光のあたる場所では刺されにくいそうです。ヒトスジシマカは、夜間はほとんど吸血活動をおこないません(イエカは逆に夜活動します)。
デング熱の潜伏期間は、3〜7日。発熱・嘔吐・頭痛・目の奥の痛み・関節痛・筋肉痛など、インフルエンザに似た症状なのですが、鼻水・セキ・のどの痛みといった症状はほとんどみられないのが特徴です。熱は5〜7日、ときには9日も続き、下がってくるときに発疹が出ます。下痢症状になる人も・・・。
現在デングウイルスに効く薬はなく、自然に治るのを待つしかありません。とはいっても、脱水症状をおこしやすく、まれに重症化の危険もあるので、正しい診断と適切な経過観察が不可欠です。急に出血症状(鼻血、吐血、下血、皮下出血など)があらわれて輸血が必要になる場合もあります。

血を分けた虫なのに
血を分けた虫なのに

帰宅して熱が出たら、かならず受診! 楽しい夏にしたいですね

デング熱のウイルスには4つの型があり(去年流行したのは『デング1型』)、感染すると免疫ができますが、逆に他の型に対しては重症化しやすくなるそうです。自分が何にかかったかを知ることは重要なのですね。
また、大人が感染すると8割が発症しますが、子供は半数くらいしか発症しません。けれど、ひとたび発症すると重症化する危険が高いのだそうです。
海外旅行やレジャーなどから帰宅して発熱したときは、すぐ病院に行き、自分では蚊に刺された覚えがなくても、念のためおでかけした情報を医師に必ず伝えるようにしましょう。
今年は、どの公園でも安心してお散歩できるといいですね!
<参考>
『今から始めるデング熱対策』講演資料 (東京都健康安全研究センター)