ただ、栗原氏は、「AIの性質の根本的な部分に関して、誤解が広まっている」と話す。その一因として「人工知能」という言葉自体の問題があるという。

「『人工〇〇』という言葉には、『人工心肺』や『人工衛星』などがありますが、『人工』の後に続く事柄の仕組みが明確にわかっているから、作ることができる。しかし、『知能』というのは、定義づけができない曖昧な言葉で、これを聞いた人はターミネーターや鉄腕アトムのように、AIは人間のように自分で考えて動いているものと錯覚してしまう。致し方ないところですがこれがAIについてのミスリードを招く最大の原因だと思います」

栗原聡氏

 そしてこう続ける。

「よくAIに『仕事を奪われる』と言いますが、実際は『人が道具として使うAI』に仕事を奪われるのです。人が仕事を失うのは、あくまでも人間がAIを使った結果です。いまある全てのAIは道具型であり、AI自身が人のように思考しているわけではない。例えば、生成AIは『優秀ですが確率的に尤もらしい答えを出す仕組み』というだけです。いま私たちに必要なのは、AIを道具として捉え、その性質や使い方を正しく理解することだと思います」

(AERAdot.編集部・唐澤俊介)

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唐澤俊介

唐澤俊介

1994年、群馬県生まれ。慶應義塾大学法学部卒。朝日新聞盛岡総局、「週刊朝日」を経て、「AERAdot.」編集部に。二児の父。仕事に育児にとせわしく過ごしています。政治、経済、IT(AIなど)、スポーツ、芸能など、雑多に取材しています。写真は妻が作ってくれたゴリラストラップ。

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