梅雨の季節になると、白っぽかった紫陽花たちがどんどん青くなっていきます。まるで空の青をもらうように。雨の中で美しく咲く花たちを、日本人は「あめふりばな」と呼んで愛でてきました。七十二候『乃東枯(なつかれくさかるる)』の花「ウツボグサ」も、そのひとつ。雨と人を結んでくれる花をさがしにでかけてみませんか。
この記事の写真をすべて見る日本各地にある「あめふりばな」と、その言い伝え
「あめふりばな」と呼ばれている花は全国にいくつもあり、名の由来も地方によってさまざまのようです。そこに共通しているのは、人々が花を見ながら「空」を感じていることでしょうか。
その花を摘むと、雨が降る。
その花が咲くと、雨が降る。
雨が降ると、その花が咲く。
雨の季節が来ると、その花が咲き始める。
雨の中で、その花はより美しく咲く・・・
寒い地方では「雨が降る」 には「雪ではなくて」という意味が含まれていて、暖かい季節の到来を告げる花としても、こう呼ばれるそうです。
ヒルガオ、ホタルブクロ、ツリガネソウ、ギボウシ、イチリンソウ、シロツメグサ、コケリンドウ、スミレ・・・ ほとんどが、野や道端に濡れて咲く小さな花。
ヒルガオは、北海道〜九州に分布し、「あめふりばな」とされる地域も多いようです。アサガオと違う点は、昼間になっても開いていること。毎日そこに咲き続けているように見えますが、花の命は一日限り・・・つぎつぎに朝咲いては、夕方には萎んでしまうのです。「摘み取ると雨が降る」という言い伝えは、「今日だけはそのまま咲かせておいてあげたい」という思いから生まれたのかもしれませんね。
『乃東枯(なつかれくさかるる)』、その前に・・・
七十二候『乃東枯(なつかれくさかるる)』は、夏至(6月22日)の頃。
「なつかれくさ(夏枯草・カコソウ)」は、北海道〜沖縄に分布するシソ科の植物ウツボグサです。『乃東生(なつかれくさしょうず)』の冬至の頃に芽を出し、夏至が過ぎると、残った花穂が枯れたように褐色になることからこの名があります。
「ウツボグサ」という呼び名は、武士が矢を携帯した『靫(うつぼ)』という細長い容れ物に花穂の形が似ているからだそうです。
ウツボグサの花穂は、昔から漢方薬として用いられてきました。消炎・利尿作用があり、皮膚病・眼病・腎臓病・高血圧・婦人病などにも効果があるといいます。
枯れてからの方が注目される植物ともいえますが、薄紫色の可憐な花も見頃です。夏が来る前に、雨の中に咲くウツボグサもぜひ愛でてみたいですね。
「空の色をおぼえておいて」と青い花たちがささやくのです
梅雨空の下、爽やかな白い花以上に恋しくなるのは、青い花かもしれません。
「雨のしずくが空色を運んで落ちてきたので、こんな色になっちゃいました」というように、晴れ晴れと青く咲いています。雨雲の上には、こんな明るい空が広がっているのですね。
お住まいの土地では、どんな花が雨に愛されているでしょう。お散歩しながら写真を撮ったりスケッチしたり、一句詠んでみたり・・・。ふさぎがちな気分をリフレッシュしてくれる 「Myあめふりばな」をさがしに、外へ出てみませんか。日本ならではの雨の季節を、心ゆくまで味わいましょう!