最近、テレビや雑誌で取り上げられることが多い「クラウドソーシング」。これは、インターネットを介して、さまざまな仕事の受発注を行えるサービスのことだ。日本では従来、「企業」への外注がほとんどだったが、クラウドソーシングは「個人」へ仕事を発注することができるサービスだ。
そのクラウドソーシングの市場規模は、2014年度で400億円に達したという。わずかに3年前には40億円ほどの市場規模しかなかったことを考えると、まさに破竹の勢いで成長している。その背景には「ライフスタイルの変化」も要因として大きいと考えられる。
クラウドソーシングサービスを運営する「クラウドワークス」の成田修造取締役副社長は次のように語る。
「クラウドソーシングは、時間と場所に縛られない新しい働き方の提案でもあります。米国では国土の広さも影響して、ネット上での仕事のマッチングであるクラウドソーシングは早くから普及していました。日本では、実は東日本大震災の影響もあったのではないかと思っています。震災以降、家族といる時間の大切さ、地元とのつながりの大切さといったことを強く意識する人が増えたのではないでしょうか。それもあって、“新しい働き方”に注目が集まった。また、正社員比率が5割を切っているということも、すでに働き方が変化していることを示していると思います」
今の仕事を辞めて田舎に帰ったはいいが働き口がない、田舎に嫁いだが子どもが手離れしたので復帰したい、上京せずに地元で働きたい。そういった状況を打破する施策として、新たに注目されているのがクラウドソーシングとクラウドファンディングとの連携だ。クラウドソーシングで人的リソースを確保し、資金の確保をクラウドファンディングで行うのだ。
新たなビジネスアイデアを思い付いた場合、それを実現する課題は「資金と実現力」だ。アイデアを思い付いても手伝ってくれる人がいない、必要なスキルを持っている人がいない、さらに、お金を借りるハードルが高すぎるという起業家にとって、資金をクラウドファンディングで集め、必要なスタッフをクラウドソーシングで募集することが可能になる。お金も人脈もなかったアイデアマンが、そのアイデアを実現するチャンスが生まれるのだ。
そうやって起業する人が徐々に出て来ていると成田氏は話す。
「例えば、『Makuake』というクラウドファンディングサービスがあるのですが、そこで資金を集め、プレゼンテーション用の資料や動画などの製作を当社のサービスで集めたクリエイターに作ってもらうといったことがすでに起こっています。また、『ファーボ』という地域型クラウドファンディングサービスでは、ご当地CFの製作などをクラウドソーシングで集めたスタッフで行っています。クラウドソーシングとクラウドファンディングは融合し始めているのです」
クラウドファンディングで資金を、クラウドソーシングで人材を集め、ビジネスを実行していく。こうなると、会社さえ必要ないという事態さえ生まれるかもしれない。正社員比率が5割を切っているという話があったが、これからは起業家が会社にこだわらずビジネスを始めることができる時代になっていくのかもしれない。
(ライター・里田実彦)