(写真はイメージ/GettyImages)

 新商品開発のため、期間限定で部署総出で残業することになった。メンバー全員が毎日数時間の残業をして頑張っている中、新入社員1人だけが定時になると帰ってしまうのだ。会議があるから残るようにと言っても、命令を聞かずに帰ってしまう。残業できない事情とは?そして会社は残業を拒否する社員にどれくらい強く出られるのだろうか。(社会保険労務士 木村政美)

全員残業して、急ぎ新商品を企画せよ!
管理職会議での重要命令を聞かない新入社員

 8月下旬の管理職会議の席上で、甲社長からライバル会社に対抗するため、来年4月に発売する予定の新商品を急遽企画するように命じられたA課長。10月末の会議において新製品の概要などを甲社長、専務と他の管理職者の前でプレゼンすることになり、会議が終了して部署に戻ると早速メンバー全員を集め、会議で決定した内容を伝えた。

「10月の会議に間に合わせるため、明日から当分残業することになるが、一致団結して大ヒット作を生み出すためにがんばろう。皆、よろしく頼むよ」

と呼びかけた。

 次の日から、A課長とメンバー全員が毎日2~3時間の残業をして業務に当たった。しかしBだけは違った。終業時間の17時になると、「お先に失礼します」と自席のパソコンを閉じ、足早に退社した。Bは新入社員なので商品の企画、立案、には直接関わらないものの、類似商品などの市場調査や資料の作成など、手伝ってもらいたいことはあるし、課内の全体ミーティングには参加してもらいたい。皆が残業するようになってから1週間後、さすがにイラついたA課長はBに言った。

「B君、17時から全体ミーティングをするから参加して」

 しかしBは、「残業できないので無理です」とキッパリ断り、定時で帰ってしまった。他のメンバーたちからは「今とても忙しいのでBにもいろいろとやってもらいたいのに残業をしないのは困る」などと不満が出た。A課長は何度もBに残業をするように話したが、Bはどうしても無理だと断り、理由を聞いても答えなかった。

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会社帰りに立ち寄ったメイドカフェでA課長が見たのは……