「相手の立場になって考えなさい」
と、よく言われる。
でも、これって、けっこう難しい。
とっさになかなかできない。
だから、心に余裕がある時に、「入れ替わりの術」を使って、その人になって、自分のことを見てみる。
意外と、これ、いろんな発見がある。
人なんて思い通りになるはずがない。分かっているけれど、仲間に子供に夫についイライラしてしまう。
「わたしは、こんなに一生懸命にやっているのに……」
「なんで、わたしのことを分かってくれないの」
わたしも、しょっちゅうそう思って、悲しくなったり、投げやりになったり。
でも、心の余裕のある時に、入れ替わって楽しんでみる。
「わたしが、出張の時に、テレビばかり見てないで、ちょっとくらい部屋の掃除してくれたらいいのに」
と、夫に腹を立てていた。
そんな夫と入れ替わってみる。
「嫁もいないし、気楽やし、ふだんゆっくり観れないDVD借りて来よう!」
そんなふうに考える自分がいる。それが分かると、
「そんなに自分の都合の良いように動いてもらえるわけないか」
と、あきらめがつく。
「ちょっとは、連絡しなさいよ」
「ダラダラしてばかりいるんじゃない」
と、しょっちゅう娘たちにイライラしている。
そんな娘と入れ替わってみる。
「たまには、母親に連絡したほうがいいけど、連絡してもバタバタしているし、たまに会うと説教されるし、そっとしておこう」
「でも、お小遣いだけは欲しいなあ」
そんな娘たちの気持ちになると、彼女たちの行動も分かる。
人間、50歳を過ぎると、20代の部下やバイトとなかなか話がはずまないことだって多い。そんな彼らと入れ替わってみる。
「大谷さんに何を話せばいいんだろう」
「下手に話しても、突っ込みを入れられるだけかもしれないし……」
そんなふうに考えてしまうだろう彼らの気持ちに気づく。