土屋氏の父親は自らの資金管理団体をめぐる政治資金規正法違法事件で埼玉県知事を辞職しているが、土屋氏は父親の力添えで(と噂されるようななか)、テレビさいたまで自分の名前を冠した料理番組を持っていた。約40年前に新潟放送で流れていた「品子のさわやかクッキング」を観たが、若い頃の土屋氏が緊張した面持ちで「おもてなし料理」を披露している。良くも悪くも父親の庇護のもとキャリアを積んできた女性である。驚くのは、父親の同事件では、土屋氏の姉が有罪判決を受け自己破産していることだ。逮捕され自己破産までした姉、父の庇護で政治家として大臣までようやく上り詰めた妹。土屋姉妹の物語もまた長編ドラマになるような物語かもしれない。

 若い加藤鮎子氏(こども政策担当大臣)も、今回私は初めて知ったが、「ゲス不倫」で話題になった宮崎謙介・元衆議院議員と結婚していた時期があるという。宮崎氏は「加藤」と姓を変え、加藤紘一氏の地盤を引きつぐことも期待されていたのだろうが、結局、女性問題で離婚し(と関係者談レベルで拡散されている)、加藤氏が父親の跡を継ぐような形で政治家になった。もしかしたら「総理の娘」になれたかもしれない人生を生きながら、父親の人間関係を引き継ぎ、「婿」だった男を切り、政治家となっていく。彼女がどんな政治家を目指しているのかはまったく見えてはこないが、やはりフツーではない人生の宿命を生かされているのを感じる。

 女が政治家になる太い道、それは父親が政治家であったこと、である。今回の5人の中で政治家の父親がいないのは高市早苗氏(経済安保担当大臣)と上川氏だけであるが、そういう意味で、高市氏と上川氏の孤独、それ故のたくましさは他の3人とは別格にも見える。

 つまらない中にも、やはり女の人生の激しさはある。男の勢力争いに巻き込まれる娘の人生もある。

 内閣発足後第一の失言となった「女性ならではの感性」について、岸田さんは文書で、「政策決定における多様性の確保が重要であることや、今回任命された女性大臣に、その個性と能力を十分に発揮して職務に取り組んでいただきたいという趣旨を述べた」と意味不明な回答をしているが、そんな前時代的な感性がはびこる永田町で、女性議員たちはサバイブしている。「女性ならでは」味わう理不尽と激震の人生を生き抜いてきた5人の女性大臣の今後を、見守っていきたい。

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北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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