9月13日、記念撮影に臨む岸田文雄首相(前列中央)と閣僚ら
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 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、内閣改造と、史上最多タイとなる5人の女性大臣の激震の人生について。

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 内閣改造。何一つ心動かされない。いったい、この静けさは何だろう。もしかしたら、これまでの人生で、最も心動かされない内閣改造かもしれない。政治家ってこんなに、つまらない女性とつまらない男性の集まりでしたっけ……と、ある意味、新鮮さを感じるほどでもある。

 たとえ問題だらけの組閣や内閣改造であっても、たとえ紅一点の内閣であっても、赤い絨毯が敷かれた階段にずらりと新大臣たちが並ぶ時は、それなりの威圧感、それなりの面白さがあってしかるべき瞬間だったはずだ。百戦錬磨の狡猾な妖怪クラスの怖さを放つ老人や、ここは高級クラブなのか……と目を疑うドレスや着物で登場する女性といったお決まりの存在もいない。史上最多タイの女性の数……と言われても、だから何?とフェミニストらしからぬことを、思わずこぼしてしまいそうだ。 

 だいたい「選ばれた」5人の女性大臣に期待できることが思いうかばない。面白みに欠けるし、個性が薄すぎるし、彼女たちがこれまで「何を語ったか」「何をしてきたか」が分からない。上川陽子氏(外務大臣)の起用を「法務大臣時代にだれよりも死刑執行をしてきた。肝が据わっている」と言っている評論家がいて驚いたが、上川さんが「やってきたこと」として目立っているのは、それくらい、ということだろう。そのつまらなさは男性大臣にも言えることで、一言で言えば、この内閣は「つまらない」。それは岸田さんの個性というものなのかもしれない。

 とはいえである。これほど女性が差別されている国で、大臣までにもなる女性たちの人生が面白くないはずはない。「つまらなさ」の陰に、きっと「女性ならでは」の人生が隠されているはずである。

 たとえば復興大臣となった土屋品子氏。参議院議長などを歴任した父を持ち、サラブレッド二世として期待されていた政治家でもある。衆議院議員として8期も政治家をやっている超ベテランなのに、大臣になるのは初めてというのは、フツーの男性議員ではなかなか味わわない不遇であったろう。政治家になる前は料理家で、昨年くらいまでYouTube上の「品子のさわやかクッキング」で、ペパーミント寒天の作り方などオリジナル料理のレシピを披露している。いきいきと楽しそうである。聖心女子大学を卒業した後に料理専門学校に入っているくらいだから、本当はその道で生計を立てる人生を生きたかったのではないかと思われる。

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北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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