※写真はイメージです(Getty Images)

 OpenAI社のChatGPTが公開されて以来、生成AIに注目が集まっている。それまで知られていたAIと違い、文章のみならず、さまざまなコンテンツを作り出す機能をもっている。あたかも人間の代わりに何でもできて、人間にとって代わられるのではないか、という意見も聞く。しかしITジャーナリストの西田宗千佳氏は「生成AIが得意とする領域と、人間が得意とする領域は結構異なっている」という。生成AIとは何なのか、西田氏の新著『生成AIの核心 「新しい知」といかに向き合うか』(NHK出版新書)から一部抜粋して解説する。

【表】ChatGPTが答えた将来なくなる仕事はこちら

*  *  *

AIに「積極的に奪ってほしい仕事」と「そうでない仕事」

 生成AIに最初に触れたとき、まず「ネット検索代わりに使ってみる」ことはよく見られるケースだろう。しかし、両者は本来違うものである。生成AIはネット検索よりはるかに汎用的な存在であり、多種多様な使い道がある。

 人間的な文章を生み出す力を持つ一方で、人間と同様の働きをすべて行うわけではない。一見人間に似た「知的なソフト」に見えるが、生成AIが得意とする領域と、人間が得意とする領域は結構異なっている。

 この特性は、人間の労働と生成AIの関係を考えるうえで重要だ。

 すなわち、人間にとってはAIに「積極的に奪ってほしい仕事」と「そうでない仕事」がそれぞれ存在するということである。

 積極的に生成AIに奪ってもらいたい仕事とは、厳密には「仕事」というより「作業」に近いものを指すのだろう。特に奪ってほしいのは「反復的なタスク」だ。例えば、データ処理や認識、特定のフォーマットに従って文書を書き換えるといった作業がこれに該当する。これらは人間が行ってもいいし、実際PCが登場する前は人間が行っていた。だが反復作業は時間がかかるし、なにより疲れる。

 人間にあまり向かない仕事の一つに、ほかにも「音声からの文字起こし」がある。従来は、人が聞いてそれをタイプするなどの形で記録していた。それなりに脳を使うが、本質的には単純作業である。しかし、ちょっと前までは、ソフトウエアでは不完全なものしかできなかった。筆者の実体験で言えば、1時間分の録音を人間が文字起こしすると、最低でも数時間はかかる。

 だが現在は、AIの進化により、英語ならほぼ完璧に、日本語でも条件によっては相当の品質でAIによる文字起こしが可能になっている。作業時間も数分から十数分というところで、待っているだけで終わってしまう。

 画像解析なども人間には時間と労力がかかる作業だが、AIに特定の命令を与えてさせるのは簡単なことだ。AIには人間が持つ疲労という概念がないため、連続しても同じパフォーマンスを発揮する。今や工場でたくさんの工業機械にそれぞれ人を配置して監視させるのは、労力的にも人件費的にもナンセンスだが、カメラ+AIに担当させるなら、何十か所でも用意できるだろう。

 皮肉な話なのだが、現状、人間の手足ほど「柔軟に動いて正確に制御できるもの」はない。実のところ、監視するAIのアラートに応じて人間が動く、というのは合理的な姿でもあるのだ。人間が常時監視場所に張り付いている必要はなく、別の仕事をしながら必要な時に動ける体制にしておく、という働き方が自然だろう。

生成AIに期待したい分野とは

 生成AIは、定型文の作成や業務レポートの作成といった、特定のパターンに基づく文章生成も得意としている。これらの作業を生成AIが担当することで、人間の作業負荷を軽減し、より価値のある作業に時間を割くことができる。

 生成AIが得意とする領域は幅広いが、中でも期待されるのがデータ解析とその結果の視覚化である。様々な種類のデータから意味のある傾向やパターンを見つけ出す、という分析作業だ。例えば、グラフなどを用いて視覚化、レポートを作成することなども含まれる。

 それに加え、コンピュータ・プログラムの作成も得意である。これは一見意外かもしれないが、プログラムも言語である、と考えると理解しやすい。

 また、インターネットにはプログラム学習や成果の共有といった目的から、多くのサンプルコードが存在する。これらのサンプルコードから生成AIが「良いプログラムの書き方」を学んでいる。

 生成AIが間違った内容を含む文章を作ってしまうように、プログラムについても間違った内容が生成されることはある。だが、プログラムという存在が論理的でブレが少ないからか、自然言語に比べると間違いは少ない傾向にある、と言われている。

 そんな特性を活用したのが、2023年7月、OpenAIが公開した「コード・インタープリター」という機能だ。この機能はChatGPTに組み込まれた。文章で与えられた命令に従い、内部で「Python」というプログラム言語を使って処理を生成、命令通りのデータ解析を行う、というものである。

 例えば、ある会社の業績データがあるとしよう。これをグラフ化し、国別の売上と全体売上の間での相関関係を見つけたい、とする。もちろん従来でもエクセルなどの表計算ソフトを使って整理すれば出てくるものだ。しかし、それにはエクセルなどを使って解析するノウハウが必要であり、その大半は面倒な作業だったりもする。そこでPythonを使って自動化する人もいるのだが、これもまた技術を要する。

 しかし、コード・インタープリターを使うと、そうした技術がほぼ不要になる。解析したい元データがあり、「自分がどんな情報を求めているのか」という目的さえはっきりしているなら、ChatGPTにそれを命令すればいいだけだからだ。

全体を見て責任を持つのが人間の仕事

 しかし、生成AIによるプログラム生成には限界がある。基本的なプログラムは生成できるが、複雑なプログラム全体の構造を一から生成AIだけで設計し、一度に完全に作り上げることは、現時点ではまだ難しい。

 現在の生成AIは、各種の業務内容を細分化して与えられたなら、それらを高い精度で処理することが可能である。だが一方で、全体の業務を統合するのはそこまで得意ではない。「大局観に欠ける」という言い方ができるかもしれない。これは生成AIそのものの限界というより、開発の途中であるから、という点が多分に影響している。

 また、そもそも「目的通りの仕事ができているか」ということに責任を取る役割は、本質的には人間が担当すべきものだ。それぞれのタスク履行はAIが行う領域でも、それらを全体のビジョンに組み合わせる統括的な役割は、人間の方がより向いている。ただし、「より良く組み合わせるにはどうすべきか」というパズル的な部分は、AIにさせた方が効率は良い。そもそも「良い組み合わせ」がなにかを定義するのが人間の役割である。

 全体のプランニングや創造的なアイデア出しといった部分も、人間が担当すべきだ。これらは我々が楽しみを感じる活動であり、高度な視点から全体像を見つめ、検討する作業は、それ自体が面白く刺激的な仕事でもある。

 人間が得意とするこれら創造的な仕事を自分たちで行い、一方で面倒で時間のかかる大変な業務を生成AIに委託するのが、最適な分担と言えるのではないだろうか。

 このような視点から見ると、人間と生成AIが協力し合う関係性、つまり「コパイロット」の本質の一つは、人間が興味深く創造的な業務を担当し、生成AIが煩雑で時間を要する業務を効率的に処理することにあるのかもしれない。

 これにより、我々はより高いパフォーマンスと、充実した楽しい労働環境の両立を目指すことになりそうだ。

ここまでの文章でコパイロットとしての実力を示してみた

 じつはここまでの文章について、ベースは生成AIに多くを書いてもらっている。要はコパイロット(副操縦士)としての生成AIとはどんな存在なのか、それを生成AI自身の力を借りて示してみたい、という狙いのためである。

 ただし、誤解しないでほしいのは、生成AIが書いた文章「そのまま」を掲載しているわけではないことだ。生成AI、具体的にはChatGPT(GPT - 4利用)に条件を与えて書いた文章を、最終的には筆者が精査した上でまとめている。また、その文章を書くために必要なアイデアの一部も、生成AIであるマイクロソフトの「Bingチャット検索」やChatGPTと「相談」した上で作っている。

 どのように生成AIの回答をもとに筆者が手を入れて仕上げていったのか、詳しいプロセスは、拙著『生成AIの核心』を読んでみてほしい。生成AIはあくまでツールであり、文章を最終的に作るのも、その文責を持つのも人間であるべきであるという理由がおわかりいただけるはずだ。