「そんな夏の気温の上昇に比例するかのように、以前はほとんどなかった山火事が近年では頻発するようになりました」
彼女によると23年は5月から高温かつ晴天が続いていた。一例を挙げるとバンクーバーから北東150キロメートルに位置する人口約210人の村リットンでは、カナダ史上最高気温となる49.6度を観測。ちなみにバンクーバーの緯度は北緯49度。日本最北端の稚内市は北緯45度なのでそれよりもさらに北でこの気温だ。
スロベニアでは大洪水
カナダ政府天然資源省が7月下旬に発表したデータによると、その時点までの今年の山火事発生件数は4797件。同時期の過去10年の平均発生件数と比較すると約1.3倍だ。
この数字だけではたいしたことがないように見えるかもしれないが、延焼面積はなんと約7倍の約12万平方キロメートル。日本の国土の約3分の1に相当する広さだ。消火活動がいかに困難を極めるかわかる。
8月17日にはケロウナ市で大規模な山火事が発生。強風により焼失面積は拡大した。
「煙害が襲っているアメリカ合衆国からは約2千人、他にもフランス、オーストラリア、ニュージーランドなどからも多数の消防士が派遣され、消火活動にあたりました」
前出の村山さんがそう語るように、災害救助に国際協力は必須となっている。異常気象を分析する国際研究グループ「ワールド・ウェザー・アトリビューション」(WWA)によると、地球温暖化の影響で山火事の起きやすさが2倍以上になっているという。
被害が国境をまたぐという点ではヨーロッパの水害も同じだ。8月上旬、オーストリア南部やその南のスロベニアでは記録的な豪雨に見舞われ、洪水が発生。オーストリア南部ケルンテン州では2500人の消防や軍隊が動員された。
「ヴェルター湖畔にある州都クラーゲンフルトでは歴史的建造物やキャンプ場が水没して、キャンプ客は近隣の学校に避難しました。お隣のシュタイヤーマルク州では水没した家の2階などからボートで救助される人もいました」