オーストリア・ウィーン在住の御影実さんはそう語る。
「よりひどい状況なのは隣国のスロベニアです。洪水や土砂崩れにより、なんと国土の3分の2が被害を受けています」
スロベニアの国土は約2万平方キロメートル。つまり四国や関東平野よりもすこし広い程度だ。その3分の2というからおそろしく広範囲にわたっており、被害額は約5億5千万米ドル(約800億円)とも言われている。当然、1991年の建国以来の大惨事だ。
アルプスの氷河も減少
豪雨との因果関係は明らかではないが、オーストリアでは昨年から記録的な猛暑に襲われている。前出の御影さんは語る。
「22年の国内最高記温は38.7度。また雪を含めた降水量は例年より全国平均で15パーセントも少なかったようです」
これにより「夏スキー」が楽しめるアルプスの氷河が、毎年数十メートル規模で減少。50年後には消え去るかもしれないと言われている。(ジャーナリスト・柳沢有紀夫=海外書き人クラブ)
※AERA 2023年9月11日号より抜粋