北米やギリシャ、ハワイで大規模な山火事、スロベニアでは大洪水。世界の異常気象の現状を海外書き人クラブのメンバーが報告する。AERA 2023年9月11日号より。
【写真】オーストリアでは昨年から記録的な猛暑に襲われ、アルプスの氷河も減少
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「異常気象」が「日常的」になった。そんな印象を受けるのは決して日本だけではない。
北米大陸では2023年6月、カナダで起きた山火事の煙が、同国全土だけでなくニューヨークなど隣国のアメリカ合衆国の都市まで包み込んだ。
ヨーロッパでは7月下旬に、ギリシャのロードス島で山火事が発生。住民やバカンスに訪れていた観光客約2万人が避難を強いられた。
8月に入ってからは中央ヨーロッパのスロベニアで国土のなんと3分の2が洪水に襲われた。
カナダは広域で山火事
そして太平洋のハワイ諸島にあるマウイ島でも山火事で多数の犠牲者が出た。
気温の上昇も異常だ。中国の新疆ウイグル自治区トゥルファン地区では7月に最高気温52.2度を記録した。
熱波は人口密集地も襲っている。アメリカのアリゾナ州の州都フェニックスは人口160万人以上、周辺部を含むいわゆる「都市圏人口」は450万人を超えるとされる大都市だが、7月には31日間連続でカ氏110度(セ氏約43.3度)を超えた。最低気温もそれほど下がらないため20日までの7月の「平均気温」はカ氏102.4度(セ氏39.1度)だという。
もはや夏を迎えた北半球中が異常気象に見舞われたと言っても過言ではない。そんな世界の状況を、各国に在住する「海外書き人クラブ」のメンバーに聞いてみた。
隣国であるアメリカまで煙で包み込んだカナダの山火事。だがなぜ緯度が高く、夏でも涼しい印象のカナダで山火事?
「カナダの地元の人たちによると10年くらい前まではエアコンのない家も普通だったようです。涼しいから冷房設備は必要なかったのです。ところが近年の夏の暑さで慌てて設置する家庭が増えています」
そう語るのは南西部の大都市バンクーバーから350キロほど内陸部に入ったケロウナ市に住む村山葵さんだ。