続けていると1人の先輩がざこばに、「二葉も出してはどうか」と言ってくれた。ざこばは電話を取り出して、一門の落語家が多く所属する米朝事務所の社長と相談を始めた。「ここは押さな」と思った二葉、「頑張ります」と横から言った。電話が終わり、出演が決まった。
「ありがとうございますって、泣きましたね。うれしいっていうのか、悔しいっていうのか、小さい薄い壁やけど、なんかちょっと壊せたみたいに思ったから」
20年1月、初出演。22年9月に米朝事務所を辞めるまで出演した。
毎週火曜日放送の「ま~ぶる!桂二葉と梶原誠のご陽気に」(KBS京都ラジオ)は二葉にとって初の看板番組だ。ディレクターの大坪右弥(26)は、ラジオでの二葉の魅力は「嘘をつかないこと」だという。みんながうなずく場面でも、違うと思えばうなずかない。だから信頼され、全国からメールが来る。
NHK新人落語大賞受賞後、「私の周りのジジイども!」のコーナーを作った。二葉の声は「怒り」をポップに柔らかくする、大賞受賞で自信と解放感が増したように見える、と大坪。
「らくだ」の話に戻る。「しごきの会」と「チャレンジ!!」で、二葉は台詞を変えている。一つは紙屑屋が酔って自分語りをする台詞。道具屋を構えていたが、酒のせいで紙屑屋になった。最初の妻は「いいところ」から嫁に来たという場面。
「前のかか、女一通りの道、みんなできた。縫い針、茶、花。けど貧乏慣れしてなかった」
それをこう変えた。
「前のかか、縫い針、茶、花、みんなできた。けど貧乏慣れしてなかった」
ずっとメラメラしている 毎朝、米朝の写真に感謝
「女一通り」をなくした。最初は教わった師匠通りにするのが礼儀だから、すべて忠実に演じた。それを2回目から外したのは、「なんか引っかかるし、別に言わんでもいいかなと思って。引っかかったままやると、嘘っぽくなるので」。気になる言葉は他にもある。「『嫁はん』とか言いたくないんです。『奥さん』もあまり言いたくない。できるだけお名前で呼んだりしてるんですけど」
登場人物に「お名前」と言う二葉。「お玄関」に「お師匠はん」「おネギ」も聞いた。母の話は「身内の話であれですが」と言ってからし、「米二師匠が『らくだ』をほめていました」と言うと、「親バカみたいですみません」と反応した。そんな品の良さが落語ににじむ。という話はさて置いて。