必要なのは筆・墨・硯・紙、お手本。これでおおよそ3000円程度ですむはずです。
さて、いよいよ書いてみましょう。「きれいな字を書く・書かなきゃ」という意識をいったん忘れて、ひとり学びの楽しさを味わうことが目的です。
夕食を済ませて、寝るまでの時間など、いかがでしょうか。
「臨書」に挑戦
古典を真似して学ぶことを「臨書」といいます。例えば楷書のお手本として挙げた「高貞碑」は1500年ほど前の中国の石碑の文字です。文字と地が白黒反転しているのは石碑に彫り込まれた文字の「拓本」を取っているからで、これをお手本にします。文字が揃わないこともあるでしょうが、自分の名前の文字を探してコピーを切り貼りしてお手本にするのもいいですね。
前回、楷書・行書・草書・かなのお手本を挙げておきましたが、篆書と隷書はやはり初心者はとっつきにくいので、今回は将来の目標ということにしておきます。
脇においたお手本を眺めながら硯に水をたらして、墨をゆっくりとすり始めましょう。
水の量は少しで結構です。墨を垂直に立てる、立てないなど、これまたいろいろな意見がありますが、ここでは垂直に立ててすります。しかし、あせって力を入れてガリガリとする必要はありません。墨がねっとりとしてきたらそろそろすりあがりです。
「高貞碑」は、もちろん漢文で、亡くなった人を悼む内容なので、意味もわからないし、ピンとくる言葉ではないですね。文字の形が気に入った、書きやすそう、というだけで十分です。6字程度、気に入った部分を見つけて半紙に書き始めてみてください。半紙を6つに折っておけば文字の大きさの目安になります。
「繰り返し」が大切
墨がひどくにじむようであれば、すり足して、繰り返し書きます。はじめはうまくいかないのは当たり前で、文字によっては筆順もわかりにくいかもしれません(筆順が示してあるお手本も出ています)。ただ、6文字を10枚位書いていると、なんとなくどうすれば文字の形ができてくるかはわかってくるものなので、次第に面白くなってくるはずです。とにかく「繰り返し」が大切です。
今日はうまく行った、と思って翌日に昨日書いたものを見ると、なんとも下手くそでがっかり…なんてことはしょっちゅうです。
書くことに没頭できる貴重な時間
そもそも短期間でうまくならないのは当たり前なので、開き直って、じゃんじゃん書くことです。下手でももちろん構わないのですが、自分の書いた字がお手本とどう似ていないのか、じっくりと見ることをおすすめします。書くことに没頭できるようになったらしめたもの。この時間が貴重なものになってきます。
そのうちになんとなく格好がついてきたな、と思ったら次の文句に進みます。
自分勝手になにを書いてもいい、とは言うものの…筆の持ち方やテクニックなどは確かに過去の蓄積がありますから、気になってきたら、さまざまに出版されている教則本を、言葉の意味や石碑の来歴などが気になってきたら書道史の解説書などを立ち読みしてみてください。自分でテキストを探して、試行錯誤しながらやり方を飲み込んでいけば、関連の本にも興味が湧いてきますし、独学の楽しさがわかってきます。
そうなってはじめて先生につくというやり方もあると思います。