林真理子・理事長(左)、酒井健夫・学長(中央)、澤田康広・副学長

 18年に関西学院大との定期戦で“悪質タックル事件”を起こし、世間から猛烈な批判を受けた同大アメフト部は、新体制のもと、自主性を重んじたチーム改革を進めていた。

 薬物問題はどのような影響を与えるのか。悪質タックル事件後の19年、所得税法違反容疑で前理事長の田中英寿氏が逮捕された後の22年はいずれも一般入試の志願者数が大きく減少した。

 大学職員として8年間、入試や広報の仕事に従事した経験があり、現在、教育ジャーナリストとして活動する神戸悟氏は「今回は悪質タックルや田中前理事長の逮捕ほど、志願者数に影響はないと思います。現時点では大学の組織的に行った問題ではないので、横ばいか微減に止まるでしょう。減少したとしてもそれは今回の事件云々ではなく、人口がそもそも減っていることが原因です」

 神戸氏の目に今回の会見はどう映ったのか。同氏は「大学のガバナンスについて難しい問題を提起していると思います」と話す。

「林さんが何度もおっしゃっていたように、大学は理事長と学長の分業が基本。教育と研究は学長、経営は理事長とはっきりわかれている。これがなかなか世間の人たちには伝わりづらい。本来、理事長は学長の責任事項である教学には口を出しません」

 部活動での出来事ということも問題を難しくしているという。神戸氏は学生生活全般に責任を持つのは学長であるため、部活動についても学長が責任を持つことに間違いはないとした上で、こう話す。

「部活動は通常のカリキュラムにない課外活動という位置づけです。大学のガバナンスの外にある話とも言えます。監督やコーチの雇用形態によっては、選手の指導のみをやればよく、今回のように薬物の疑惑があったときに報告する義務がない場合もあります。このあたりは、曖昧な位置づけにしている大学も多い。日大についてはわかりませんが、それで情報共有が遅れた可能性はあります」

 そして、こう続ける。

「部活動のガバナンスに関する課題は他の大学も抱えていることです。林さんも最後にはやる気を見せていましたが、ここできちっとした組織的なガバナンスを作り、他大学に範を示すことを期待しています。授業やカリキュラムという大学の柱の部分から外れたところなので、今まで他の大学が手を付けてこなかった部分ですから」

 林氏の改革はこれからどうなるか。今回の事件への対応が一つの試金石になるだろう。

(AERAdot. 編集部・唐澤俊介)

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