著者は子ども・若者の自傷や依存症治療の第一人者の精神科医で、本書で「自傷の本質は『人に助けを求めたり、相談したりしても無駄だ。人はあてにならないし、必ず私を裏切る。でも、自傷は決して私を裏切らない』という考え方にある」と書く。自傷はその人が弱いからではなく、「自分に厳しくて、根性がある」から起きる、と一般常識を覆す。
本書で示される回復法はとても具体的だ。自傷日誌をつけ、出来事と自傷の関係を分析する。自傷したくなったときには香水を嗅ぐ、氷を握るなど刺激の置換を行う。信頼できる人に話してみる。頑張りすぎない。苦手な人にも思いを伝えてみる。それでも自傷してしまっても、焦らない。さらに、精神科医の選び方。医師仲間が多く、臨床心理士や精神保健福祉士と協力している方がいい。驚嘆すべき技術を持つ稀有な医師ではなくて、常識と誠意を持つ普通の人がいいとも。
著者の「人生において最も悲惨なのは、ひどい目に遭うことではなくて、一人で苦しむことだ」という言葉は、自傷を超えて普遍的だ。
※週刊朝日 2015年4月10日号