AERA 2023年7月31日号より

"cascade"などのこなれ表現だ。cadenceはAI翻訳では「リズム、歩調」の意味だが、「定例会議」やその会議の頻度の意味で使われるという。regular meetingと言ってももちろん間違いではないし必要十分だが、ケイデンスといえばなんだかこなれて聞こえる。キャスケイドも同じく。辞書上は「滝」の意味だが、"Please cascade this to team members."と動詞の形で使うと「下に情報を流す、連携する」のニュアンスになり、「チームメンバーに共有しておいて」という意味になる。

 ちなみにChatGPTに「定例会議を表すこなれた英語表現」を挙げてもらったところ、Scheduled Conclave、Recurring Symposium、Periodic Summit、Routine Rendezvousなどと珍妙な表現を提案され、「これらの表現は会議のコンテキストによって適しているものが異なるかもしれませんので、状況に応じてお使いください」と断りを入れられた。

 伝わる英語を正しく使うことはもちろん重要だが、「こんな表現使えたらかっこいいな」という思いは今も昔も英語学習のモチベーションの一つだろう。その"気分"までAIに理解してもらうには、まだ時間がかかりそうだ。最後に、こんな盲点もある。

「ChatGPTに関しては、データをあちこちから引っ張ってきていて、著作権の侵害リスクもあるため、うちの社内では使用が禁止されています」(大手外資系企業の社内通訳者)

(ライター・高橋有紀)

AERA 2023年7月31日号