ブルーノートの魅力が、スタジオで念入りに「作り込んだ」アルバムとしての完成度にあるとしたら、プレスティッジの長所は「生ものの活きの良さ」にあると言えそうです。それを象徴するのがエリック・ドルフィーの一連のライヴ盤でしょう。彼の代表作に挙げるべき『アット・ザ・ファイヴ・スポットVol.1』は言うに及ばず、ドルフィーが単身ヨーロッパに渡り、現地の若手ミュージシャンたちと共演したイン・ヨーロッパ・シリーズはドルフィー・ファンならすべて購入すべき。
もちろんスタジオ録音でも、ドルフィーの傑作を押さえていることでプレスティッジ・レーベルの存在価値は極めて高く、彼の初リーダー作『アウトワード・バウンド』はじめ、『アウト・ゼアー』、『ファー・クライ』など、どれも貴重な記録。また、ドルフィーがらみのアルバムということでは、ケン・マッキンタイアと共演した『ルッキング・アヘッド』や、ロン・カーター名義の『ホエア』、マル・ウォルドロンとの『ザ・クエスト』など、良くぞ残してくれましたと言いたいですね。
マルの名が出ましたが、彼のナンバー・シリーズ『マル1』『マル2』は、共にホーン奏者をサイドに従えたハードバップ作品としてファンに愛聴されています。また『マル4』と『インプレッションズ』は、マルの数少ないピアノ・トリオ作品。
このように、プレスティッジは黒人系ミュージシャンのレーベルという印象が強いのですが、初期のスタン・ゲッツの傑作『スタン・ゲッツ・カルテット』などもちゃんと録音しているところが面白い。白人系ミュージシャンということでは、『ギル・エヴァンス&テン』などという渋めの作品や、知る人ぞ知る隠れ名盤『ジョン・アードレー・セヴン』なんていうアルバムもあるのです。後者については説明の要ありでしょう。
白人トランペッター、ジョン・アードレーは、ズート・シムズの幻の名盤『ズート・シムズ・オン・デュクレテ・トムソン』でサイドマンを務めたことでマニアには知られていますが、『ジョン・アードレー・セヴン』ではそのズートと、アルトのフィル・ウッズ、そしてトロンボーンまで加わった豪華な4管セプテット。これだけでもう快適なサウンドが聴こえてきますよね。
そしてフィル・ウッズと言えば極め付き名盤、『ウッドロア』は外せません。彼の代表作にしてパーカー系ハードバッパーの傑作アルバムです。同じ白人でも、ジョージ・ウォリントンの『ザ・ニューヨーク・シーン』となるとかなりマニアック。しかしフロントに擁したドナルド・バードのトランペットにウッズのアルトと聞けば、これはもう典型的ハードバップ。安心してご購入ください。聴きどころは名曲《インシャラー》。
とこうして、人名しりとりのようにしてご紹介してきましたが、まだまだ聴きどころたっぷりの好盤がプレスティッジには山のように残っています。次回は、マニアにはたまらない、いかにもプレスティッジ的ハードバップ名盤の数々をご紹介して行こうと思います。次回もお楽しみに。[次回4/27(月)更新予定]
(編集部註:CD紹介はアルバムごとにリンクを張ってありますが、最近はアーティストごとに格安のBOXセットが発売されている場合があります。そちらも探すことをオススメします)