(a)については、獣医学部の新設を認めない、という決定、(b)については、今治市以外を特区とすることも、選択肢としてあり得るのであり、いずれも合法に行い得るものであり、まさに、その点についての決定の中身の当否とそれに至るプロセスが問題だった。その選択に、安倍首相と親交の深い加計孝太郎氏との関係が影響したとすれば、それ自体が問題なのであり、(a)(b)の決定が加計氏が理事長を務める加計学園に有利なものになったことについて、違法ではなくても、安倍政権にとって政治的、道義的な問題が生じる可能性は十分にあった。

 ところが、野党側の追及は、もっぱら、獣医学部新設への「安倍首相の直接の関与の有無」に集中し、首相官邸、内閣府、与党側の主張は、「法令を遵守しているから問題ない」という言い訳に終始し、いずれも「単純化」され、全く嚙み合わなかった。

 それに加えて、「最初から加計学園ありき」で国家戦略特区での獣医学部新設が進められた疑いが前川証言、文科省内部文書等、相当な根拠をもって指摘されていたことに対して、今井首相秘書官を中心に、閉会中審査などで事実を隠蔽する不当な対応を行って、疑惑の追及をかわした疑いがあることも、「第二幕」で明らかになった。

 野党、マスコミの森友・加計学園疑惑の追及は、「安倍首相の関与・指示」に終始し、安倍氏本人に説明を求めるという「単純化」そのもので、「安倍首相への一撃」を狙った「大振りのスイング」を繰り返しているに過ぎなかった。

 そのような野党を、安倍支持派は「批判のための批判」と批判し、安倍政権に批判的なマスコミ論調で安倍政権批判の世論は高まったが、これらの疑惑で政権の支持率が低下しても、同時に野党の支持率も低下するだけだった。結果的には、選挙では与党が圧勝し、それによって、安倍政権の基盤は相対的に安定し、「安倍一強体制」は一層盤石なものとなった。

郷原信郎 ごうはら・のぶお
1955年生まれ。弁護士(郷原総合コンプライアンス法律事務所代表)。東京大学理学部卒業後、民間会社を経て、1983年検事任官。東京地検、長崎地検次席検事、法務総合研究所総括研究官等を経て、2006年退官。「法令遵守」からの脱却、「社会的要請への適応」としてのコンプライアンスの視点から、様々な分野の問題に斬り込む。名城大学教授・コンプライアンス研究センター長、総務省顧問・コンプライアンス室長、関西大学特任教授、横浜市コンプライアンス顧問などを歴任。近著に『“歪んだ法"に壊される日本 事件・事故の裏側にある「闇」』(KADOKAWA)がある。

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