物価高の影響で過去最高の税収になっていますから、すでに財政黒字になっている可能性があります。黒字なのに「増税させて」というのはおよそ考えられない経済政策です。

 私は、岸田首相は財務省の影響を強く受けているのだろうと考えています。財務省の目標が、財政の健全化、言い換えれば、増税です。財務省では増税をして、財政を健全化させた人が出世するといわれています。増税が教義になっているんですね。私はこうした財務省のあり方を、「ザイム真理教」と呼んでいます。

 岸田首相の目的にはもう一つ、金融の正常化があります。日銀は金融緩和で金利を低く抑え、市場に回るお金を増やすことで、経済を支えてきました。

 しかし、岸田首相はかつて金融緩和が長く続くことを問題視し、出口戦略について考える必要があると述べています。新しく日銀総裁に就任した植田和男氏は、岸田首相の意向で、金融緩和をやめるタイミングを計っていると見られています。今月27、28日に日銀の金融政策決定会合があるのですが、金利の引き上げに舵を切る可能性があります。

■「令和恐慌」が起きかねない

 ただ、金利が上がれば、住宅ローンが組めない人が出てくるでしょうし、すでに変動金利で借りていた人も追いつめられる。中小企業も資金繰りが悪化するところが出てくるでしょう。

 経済理論からすれば、財政も金融も引き締めて、緊縮・増税をしながら経済成長を達成することなどあり得ません。収支の改善は、経済が成長をしてから取り組むべきことなのです。経済を成長させるのであれば、増税ではなく、減税すべきです。岸田首相は経済理論を理解していないと言わざるを得ません。

 1929年に就任した浜口雄幸首相は、世界経済が後退するなか、財政の健全化と金融の正常化に取り組み、昭和恐慌を引き起こしました。再び「令和恐慌」を引き起こしかねない状況です。

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首相が代わるしかない