投打の“二刀流”で異次元の活躍を続ける大谷翔平選手。目標を次々と実現できる陰には、高校時代に出合ったメソッドの存在がある。「マンダラチャート」をもとに作られた目標達成シート「オープンウィンドウ64」だ。中心に目標を書き、この目標の周りに目標達成のために必要な八つの思考を足していく。さらに、これらの思考に対して、より具体的に行動すべきことを八つずつ書き、64マスを埋めていくというもの。このシートは大学でも注目されている。AERA 2023年7月24日号の記事を紹介する。
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大谷翔平選手のようにシートを作り、日々の習慣作りを目指している人たちは多くいる。岡山理科大学にはこのシートを作るゼミがある。同大学教育開発センターの教育講師、野間川内一樹さんは言う。
「一般的に、受験をくぐり抜け、目標を見失いがちな学生が多くいます。社会で生き抜く力を養うために、2021年に始めました」
テーマは、「4年後の自分」。ある男子学生は、初めはシートを埋められなかったという。中心に書いた目標は「理想の自分」。目標達成に必要な思考には、「かっこいい容姿」「クリエーター」「芸能界」「ギターを弾ける」「彼女を作る」などを書き、具体的な行動目標には「オーディションに申し込む」「動画を作る」と挑戦をたくさん盛り込んだ。でも、シートは半分しか埋まらない。野間川内さんは言う。
「目標を立てると実行しなくてはならないプレッシャーがあります。逆に、失敗すると『自分はだめだ』と自信を失ってしまいます。だから目標を立てられないという学生もいます」
そんな学生には、「無理に新しいことに挑戦しなくていい」とアドバイスするという。目標達成のための思考に「健康」を挙げたのなら、既にできている「歯を磨く」を入れればいい。
そして、ゼミのたびに振り返り、日々シートを見ることで9カ月後、「理想の自分」を目標にした男子学生は変わった。まず目標が変わった。「奴を見返すかっこいい自分になる」と具体的だ。中身も、ハキハキ大きな声で話す、布団で寝る、とより身近な内容になり、マスのほとんどが埋まった。野間川内さんは言う。
「自分と向き合うことで、言語化できていなかった思いを自分で引き出すことができるようになります。ある学生は、自分に満足していなかったけれど、自分を変えられそうな気になったようです」
(編集部・井上有紀子)
※AERA 2023年7月24日号より抜粋