春風亭一之輔・落語家
春風亭一之輔・落語家
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 落語家・春風亭一之輔さんが週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「さまざま」。

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 岸田総理の口癖らしい「さまざま」。国会質問で野党から「それはごまかしだ」と指摘され、NGワード認定されてもなお「さまざま」を連発し、岸田さん冷や汗。まるでコント。平和ですな。

 2月末に広島へ仕事に行きました。奇しくも総理の地元です。

 同行の三遊亭まんと君は高知県四万十町出身で師匠は三遊亭萬窓師匠。しまんと、まんそう、の「まん」を頂いて『まんと』。「広島は小学校の修学旅行以来です!」だって。高知辺りだと広島はけっこう近いのね。

 原爆ドーム近くに新しくビルが建っていた。『おりづるタワー』。地上13階の屋上展望デッキ「ひろしまの丘」からは市内が見渡せるらしい。「行ってみっか」と受付へ。屋上までのチケット、大人1700円也。ちょっとたじろいだが、折しも快晴。そんな日の1700円は250円くらいに感じられるね(付き添いの方が払ってくれた)。エレベーターで屋上へ。「おー!」。ほぼ360度のパノラマに風が吹き抜ける。原爆ドームを上から観たのは初めて。

 なるほど……平和記念公園を上空から観ると「景色がいい」だけじゃなく、さまざまな想いが巡ります。

 12階は「おりづる広場」。液晶ビジョンで広島の街の移り変わりを観たり、折り鶴になったようにモニター上を飛べるマシンだの(説明下手)があって家族で遊べます。「おりづるの壁」なるモノがありました。鶴を折って12階から落とすと、ガラス張りの壁面に鶴が堆積していき、時を経て、平和を祈る「おりづるの壁」が出来上がるという……。これはやらねば。おりづる代100円(払ってもらった)。何十年ぶりに鶴を折る。不思議なもので指先は覚えている。なかなかよく出来た。

「私も出来ました!」。笑顔のまんとが差し出した。??? なにこれ? 首、みじか! 羽、みじか! そして開かねー! 胴体が異常にふっくらしててなんかカッコわる! 見たことのない自称・鶴。「お前、鶴折れないのかよ?」「これ鶴ですよ」「違うだろ! 鶴はこれだろ」「……あー、それオンヅルですか?」。オンヅル? 「オスですね、それ」。性別? 鶴界にもジェンダーの波? 「僕のはメンヅルですから」。『ですから』って……?

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