「ラグジュアリーブランドのテナントは、他の百貨店に先駆けて導入した西武百貨店が長年作り上げてきた世界観の中でこそ存在価値があるのです。新装したばかりのルイ・ヴィトンのすぐそばに大衆的な家電量販店ができたら、その世界観が壊れてカオスな空間になってしまいます。そこに今まで通り、お客様が来てくださるでしょうか。ヨドバシそのものが悪いということではなく、このような『無神経な混在』こそが問題なのです」

 また、改札階から入ることができる地下1階の「食品館」は同店で最強とも言われる人気の売り場だが、こちらも地下2階などに追いやられる可能性が否定できないという。

「元祖デパ地下の魅力を失うダメージは計り知れないでしょう。しかも、ヨドバシが入る区画以外の西武百貨店の区画案は、実現性が疑わしいレベルだと聞いています」(水野さん)

 今年2月に投資ファンドへの売却が完了する予定だったが、大幅に遅れる事態に陥っている。

 水野さんは「このような状況で苦し紛れの譲歩案が浮上したが、根本的な問題解決にはなっていない」と率直な思いを口にする。

 池袋駅東口の一帯は、2027年をめどに再開発を予定しており、西武池袋本店はその中心的存在だ。故・高野区長も西武百貨店は再開発の「顔」だと断言していた。

「西武が百貨店としての姿を失ってしまった場合、再開発計画にどんな影響が出るか。街の未来のことも考えれば、ヨドバシは急いで低層階に出店するのではなく、大幅に譲歩する必要があります。仮に低層階に入ったヨドバシだけが利益を得られたとしても、世界観を失った百貨店は存在価値が薄れてジリ貧となり、結果として全体が劣化してしまうのではないでしょうか」

 池袋の「顔」は今の姿を守ることができるのか。今後に注目が集まる。

(AERA dot.編集部・國府田英之)

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